民俗芸能団体運営課題 「後継者不足」最多 北上市連合会 伝承の維持厳しく
北上市民俗芸能団体連合会(菅原晃会長)は、加盟団体を対象に2018年度実施したアンケート結果をまとめた。今後の継承見込みは23%が「困難、分からない、休止中…」と回答。芸能種別でも年代別構成員数にばらつきがあり、運営上の悩みでは「後継者不足」が最も多かった。
鬼剣舞や神楽など100を超える民俗団体があり、「民俗芸能の宝庫」とされる北上でも少子高齢化や過疎化で、将来にわたる保存継承は大きな課題。同連合会は実態把握のため、加盟63団体を対象に調査し、74・6%に当たる47団体(神楽15、剣舞15、田植踊(たうえおどり)2、鹿(しし)踊1、太神楽3、奴子(やっこ)踊1、盆踊3、太鼓7の各団体)が回答した。
回答した団体の年代別構成員数は総人数(1093人)のうち0~10代が24・8%、20~30代24・5%、40~50代28・7%、60代以上22・0%。全体的には年代別にほぼ均衡しているが、芸能種別によってばらつきがある。神楽は55%、剣舞は59%、鹿踊は60%が30代以下で若手が多い一方、田植踊、太神楽、奴子踊、盆踊、太鼓は40代以上が6、7割を占めるなど高齢化している。
運営上の悩み(複数回答可)は後継者不足が最も多く、次いで指導者の高齢化、用具の老朽化、資金不足、稽古場の確保と続いた。このほか「労働環境が厳しく出演できない」「組織運営の人材不足」「地域に子供がいない」などがあった。
収入は公演謝金や寄付金などで賄っているものの、用具の補修、更新にも多額の自己資金を要し、通常の運営全体の経費が捻出できないといった悩みもある。
アンケート全体を踏まえ、同連合会は「後継者不足はほぼ全団体に共通する最大の悩み。伝承のための維持継続が厳しい状況となっている」と分析。「後世に継承するため、連合会と市や関係団体が連携し各種対策に取り組むべきだ」とし、資金不足対策として各種助成制度活用や公演機会増加を提言している。
菅原会長は「いろいろな民俗芸能があって、北上の芸能全体が底上げされる。『やれなくなる芸能は仕方ない』『残る芸能だけ残る』ではいけない」と強調。「民俗芸能は地域活性化、コミュニティーの力になってきた。これがなくなれば地域の活力が失われ、教育力が落ちる」と危機感を示す。
保存継承に向け▽官民協働の「民俗芸能を活(い)かした地域活性化を図るプロジェクト」実行委員会設立など体制強化▽取り組み方針の策定、推進▽振興条例の制定-の三つを基軸とした振興策を主張している。
北上市民俗芸能団体連合会は「民俗芸能の保存育成に向けた取組方針」をまとめた。
全3章で構成。第1章では市内の民俗芸能の現状に触れ、継承とその対策の必要性について言及している。
第2章では、継承へ先進事例として毎年夏に各地区で取り組む郷土芸能の発表会を続けている江釣子中学校をはじめ、鬼剣舞とひな子剣舞を地域の学習に生かしているいわさき小学校を紹介。県内と他県の事例も取り上げている。
第3章では、民俗芸能を継承する取り組み、方向性について言及。民俗芸能の真の価値を伝え、理解者を増やして共に感じ合う「共感の輪」を広げる必要性を挙げる。
具体的取り組みとして▽発表機会の提供、子どもの体験機会の促進▽青壮年層への働き掛けと人材確保、次世代を担うリーダー育成▽地域外の人材受け入れ-などを推奨。企業などの協力体制構築や効果的な情報発信、記録・保存などの必要性も指摘している。
冊子は200部作成。市に提出し、市議会にも説明した。市民、行政、民俗芸能の役割を明確化した振興条例の制定を働き掛けていく。
今回の取組方針について、同連合会の菅原晃会長は「短期間で成果が出るものではなく10年、20年後を見据え、着実な積み重ねが必要。市や関係団体と共に取り組んでいきたい」と話している。