奥州・金ケ崎

「月山松」で名古屋城復元 天守閣床梁へ使用 前沢生母・神社境内 伐採前に神事【奥州】

名古屋城の3層床梁として使われる月山松

 名古屋市が進める名古屋城天守閣整備で、奥州市前沢生母の月山神社境内山林に自生する「月山松」が使用される。天守閣で最も長大の3層床梁(ゆかばり)に使われることになり、14日には伐採を前に月山松を守る会(大石喜清会長)と木造復元を受託する竹中工務店の関係者がおはらいの神事を行った。月山松の管理を担ってきた大石会長は「300年以上も生きた松が名古屋城の梁に使われることで半永久的に生きていけることになる。晴々とした思いだ」と送り出す日に向けて思いを語っている。

 天守閣整備事業は、現在の鉄骨鉄筋コンクリートの天守閣が老朽化したことを受け、「昭和実測図」を基に木造復元の手法で行われる。実測図によると、天守閣大天守は5層構造で3層の床梁には元口73センチ、末口60センチ、長さ17メートルの松の丸太材を使用しているという。

 この長大な松材を求めていたところ、月山松に白羽の矢が立った。月山松は同神社奥の院周辺に広がる森林の中で育ち、松くい虫被害や風倒などを逃れた樹齢300年余りの六十数本のアカマツ。枝がない幹がすっと伸びているため、神社などの建築材としては関係者に知られた存在という。

 今回使用されることになったのは、根元の直径90センチで30メートル余りの高さに成長している月山松。同社では「断面変化が少ない。丸太梁にはぴったりの材」と評価している。

 伐採作業は19日に枝落とし、20日に切り倒す予定だ。その後、長さを18メートルほどにして山出しが行われる。

 おはらいには、総代長でもある大石会長、同社執行役員の三田村肇さん、国会議員、県や市の関係者ら100人ほどが参列。駒形匡宮司が神事を行い、関係者が玉串をささげ作業や工事の無事を祈った。神事の後、参列者が伐採予定の松を見学し、真っすぐに伸びた見事なアカマツに感嘆していた。

 駒形宮司は「松にも寿命はある。このまま寿命を閉じるのではなく、名古屋城の中に祭られることで1000年、さらにもっと長く日本文化に貢献することは神社の誉れだ」と日本を代表する城の一部として使用される喜びを語っている。大石会長は「大事に育てて管理してきた中で、一番の木を出すことになった。ただ、県産木材の良さを広めていく役割を果たしてくれると思う。名古屋城で使われることで寿命を超えて生き返ると思えるのが今の心境だ」と晴れやかな表情を見せた。

 伐採を聞き付けて訪れた太田重郎さん(84)=同市前沢字新町=は「親戚が近くに住んでいて子供の頃はこの山でキノコ採りや山菜採りをした。立派な松だ」と写真を撮り、妻栄子さん(82)は「小学校の頃、おにぎり持って遠足に来た。すごい木だと感心しています」と大木をじっくり眺めていた。

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