奥州・金ケ崎

菅野さんが経産大臣賞 岩谷堂タンス製作所伝統工芸士 現代生活調和の工夫評価【奥州】

第21回日本伝統工芸士会作品展で経済産業大臣賞を受賞した菅野さんと受賞作の「脚付き両開き舟箪笥」

 11月2~4日に福岡市で開かれた第21回日本伝統工芸士会作品展で、岩谷堂タンス製作所(奥州市江刺愛宕字海老島)の伝統工芸士菅野好平さん(62)=同市江刺伊手字枡和=の作品が経済産業大臣賞を受賞した。郷土を代表する伝統工芸・岩谷堂箪笥(たんす)の技法を受け継ぐとともに、新たな工夫も盛り込んだ「脚付き両開き舟箪笥」が高い評価を受けた。

 同作品展は伝統工芸士の技術・技法向上と、社会的地位向上を図る目的で日本伝統工芸士会などが主催。今回は全国から214点の出品があり、19点が入賞した。衆院議長賞、経産大臣賞は2014年度の第17回に新設され、両賞の副賞金額(10万円)は最高額に位置付けられている。経産大臣賞受賞は本県初。

 菅野さんの作品は外面にケヤキ、内部にキリを用い、岩谷堂箪笥の特徴でもある重厚な手打ちの銅金具、漆塗りを施した堅固な作りの舟箪笥。高さ80センチ(脚部分含む)、幅60センチ、奥行き45センチ。大切な物を保管する隠し箱を仕込んだ「忍(しのび)」が二つ付いているほか、「普段はなかなかやることがないので苦労した」という「三方留接(とめつ)ぎ(横ほぞ有り)」の技法を用いて舟箪笥に本来ない脚を付けるなど、現代生活に調和した工夫も施した。

 菅野さんは1974年から岩谷堂箪笥製作に従事し、研鑚(けんさん)を積んで99年に伝統工芸士認定登録を受けた。2019年に伝統的工芸品月間国民会議全国大会が本県で予定されていることを契機に同展への出品を思い立ち、ケヤキなど材料の吟味の上、5月から製作に取り掛かり、初出品で上位入賞を果たした。

 「賞を頂いてびっくりした。会場に行くまでは信じられない気持ちだった」と語る。「作り終わって完璧というのはない。職人は材料に聴きながら、考えながら常に挑戦。歴史的にも貴重な伝統を受け継いでいるということを、少しでも多くの人に伝えていきたい」とさらなる精進へ意欲を示した。

 入賞作品は来年3月7~12日、東京都の東武百貨店での第5回日本伝統工芸士会秀作展で展示、販売され、初日の7日に表彰式が行われる。同社代表取締役で、同社など4事業所で構成する岩谷堂箪笥生産協同組合の三品健悦理事長は「入賞で岩谷堂箪笥の名前が広がったことを誇りに思う。良い物であることを皆さんにも理解してもらえれば」と期待する。

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