花巻

「賢治の故郷」で感動舞台 山形・新庄市アマチュア劇団 甚次郎の生涯上演【花巻】

宮沢賢治の教えを受け、農村の生活向上のために尽くした甚次郎の生涯が演じられた「土に叫ぶ人 松田甚次郎-宮沢賢治を生きる」

 花巻出身の詩人、童話作家の宮沢賢治を敬愛し、教えを忠実に実践した山形県新庄市出身の松田甚次郎(1909~43年)の生涯を描いた演劇「土に叫ぶ人 松田甚次郎-宮沢賢治を生きる」が27日、花巻市若葉町の市文化会館で上演された。県外での公演は初めてで、新庄市民のキャストが農民の暮らしが良くなるため情熱を傾けた甚次郎の生涯を「賢治の故郷」で演じ、観衆に感動を与えた。

 同市のアマチュア劇団と市民有志などでつくる「“みんなで創る”地域ブランディング実行委員会」が主催、新庄、花巻両市の共催。キャスト、スタッフの40人が花巻公演に挑んだ。

 昭和初期の新庄が舞台で、甚次郎が盛岡高等農林学校の在学中、花巻の羅須地人協会にいる賢治を訪れる場面から始まった。甚次郎は賢治から「小作人たれ」「農村劇をやれ」と教えられ、帰郷する。大地主の長男であるため小作人になることを両親に反対されるが、小作人となって生活改善のために努力する。神社の境内に土舞台を築き、地域の課題をテーマにした演劇を上演、最上共働村塾の設立などで農村救済、女性の地位向上に生涯をささげた。

 ラストシーンでは病床の甚次郎が、仲間たちが朗読する「雨ニモマケズ」を聞きながら「そういうものになりたい」と言った後、息絶える姿が多くの感動を誘った。

 劇中では甚次郎が「宮沢賢治名作選」出版のため賢治の実家を訪れたり、花巻小学校の児童ら12人も登場して「星めぐりの歌」を合唱する場面が盛り込まれた。

 同日は花巻市内外から約600人が鑑賞。同市御田屋町の押切イクさん(89)は「甚次郎の功績は昔から聞いていたけれども演劇を見て、賢治の教えを守るその生き方に共感した」と感動した様子。

 実行委の会長を務める詩人で劇作家の近江正人さん(67)=新庄市=は「賢治の教えを受け、自らの発想で農民の意識改革に取り組んだ甚次郎の功績を賢治の故郷で上演できたことはうれしい」と話し、甚次郎を演じた介護福祉士の松田直也さん(23)=同=は「初の県外公演なので不安の中での舞台だったが演じ切ることができた。地方創生の時代に甚次郎のような若者が地元にいたんだということを劇を通じて発信していきたい」と語った。

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