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ILC実現へ 関心持ち議論継続 誘致表明に至らず 政府見解

文部科学省がILCの日本誘致を現時点では表明できないとしつつ、関心を持って国際的な議論を継続する見解を表明した国際会議
推進派研究者は評価

 次世代の大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致を目指す国際組織の国際将来加速器委員会(ICFA)とリニアコライダー国際推進委員会(LCB)の会議は7日、東京都内で開かれた。文部科学省の幹部が会議に出席し、ILC誘致に関して「現時点で日本誘致の表明には至らない」としつつも、「ILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続する」という見解を表明した。国内の科学コミュニティーでの理解・支持を得るためには、日本学術会議が策定するマスタープランなどでの議論が必要とした。これに対し、会議に出席した推進派の海外研究者は日本がILCに興味を持っていると捉えて評価した。

 会議には、文科省の磯谷桂介研究振興局長らが出席。非公開での協議で見解を表明後、磯谷局長が報道陣の取材に応じた。

 この中で、日本学術会議の所見を踏まえて誘致の表明には至らないとしたものの、ILCの科学的意義を認めた上で関心を持って国際的な意見交換を継続することを表明したことを明らかにした。特に、「国内外の研究者のコミュニティーでILC計画に関する議論の継続、進展を期待する」「政府レベルでも文科省はILC計画に関する意見交換を継続する」の2点を強調したという。

 ILCに関して文科省は、米国と事務レベルで加速器のコスト削減の共同研究について協議をスタートさせており、ドイツ、フランスとも情報交換を行った経緯がある。今回の表明を踏まえ、今後は欧州とも米国と同様に協議の場を設けることも検討するとした。

 一方で、国内の科学コミュニティーの理解・支持を得られるために、文科省として正式な学術プロセスと考える日本学術会議のマスタープランでの議論を求めるとともに、高エネルギー加速器研究機構(KEK)を中心に海外の研究者との間でも、約8000億円とされる巨額な費用負担を含めた議論が進むことを期待した。

 磯谷局長は今回の見解について「誘致に向けて前進なのか、後退なのかと言われれば、一言で言えば議論の継続。ただ、プロセスに入ったということでは、段階としては進むであろう」と述べた。

 会議終了後、ICFAのジェフリー・テイラー議長とLCBの中田達也委員長、今回の会議の事務局を務めるKEKの山内正則機構長が会見した。この中で、文科省の今回の見解について、中田氏は「ILCというものに関して興味を持っている」と評価した。出席者からは誘致表明に至らなかったことを残念とする声もあったというが、テイラー氏は「まだ準備ができていないと言われたと受け止める。これから文科省のプロセスを踏んでいくことで、日本が招致を行うと提案すると思っている」と述べた。

momottoメモ

【詳報を読む】

・文部科学省のILC計画に関する見解要旨
・知事が意思表明歓迎 県内関係者 前向きに捉える
・解説 玉虫見解も一歩前進


◆ILC誘致と準備継続 県議会予算特別委 文科省見解で質疑
◆ILC今後に期待 ICFA会見を中継
◆「誘致計画はそこで終わり」 政府見解受けILC考える会

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