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彫刻に満ちる命 岩手県立美術館 裸婦、鴉、鳩像… 柳原義達 特別展示始まる

柳原義達「道東の四季の像・秋」(1977年)

 県立美術館の特別展示「柳原義達―三重県立美術館所蔵作品による」が26日、盛岡市本宮の同館で始まった。裸婦像や鴉(からす)像、鳩(はと)像で知られる柳原義達(1910~2004年)は、本県出身の作家舟越保武らと共に戦後日本の具象彫刻界を牽引(けんいん)した彫刻家の一人。素朴で生命力あふれる柳原作品の魅力を紹介している。

 柳原は神戸市出身で、東京美術学校(現東京芸術大)彫刻科で学び、在学中には高村光太郎の影響を受けた。戦後は仏現代彫刻に魅せられ、彫刻を一から学び直すため43歳で渡仏。4年余りにわたって研鑚(けんさん)を積み、帰国した後はアカデミズムから離れ独自の彫刻世界を確立した。

 裸婦像のうち、北海道釧路市の幣舞(ぬさまい)橋に設置されている橋上彫刻「道東の四季の像・秋」は、舟越、佐藤忠良、本郷新と共に手掛けた作品。舟越の春の像は同館玄関ロータリーの前庭に建つ。舟越とは2歳年上の先輩で東京美術学校彫刻科、国画会、新制作派協会と同じ道をたどり、切磋琢磨(せっさたくま)し合った仲だという。

 作品の中でもよく知られているのが、鴉や鳩を主題とした「道標(どうひょう)」シリーズ。動物愛護協会からの制作依頼を機に鳥に関心を抱き、自宅でも飼育するようになり、鳩や鴉の像を制作した。

▲柳原義達「道標・鳩」(1974年、右)

 また彫刻家としての空間認識が分かる素描作品や、陸前高田市博物館近くの屋外に設置され東日本大震災津波で損傷したものの応急処置が施されて公開されているブロンズ像「岩頭の女(ひと)」なども並ぶ。

 同館学芸普及課長の吉田尊子さんは「柳原は舟越と関連のある作家だが、舟越とは違う個性がある。初期から晩年までの作品を楽しんでいただけるので足を運んでほしい」と話す。

 特別展示は10月20日まで。関連イベントとして5月25日には三重県立美術館顧問の毛利伊知郎氏による記念講演「柳原義達、舟越保武と戦後日本彫刻」もある。

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