北上・西和賀

繭生産 初年度は118キロ 更木ふるさと興社【北上】

養蚕業の再生を目指して18年度にスタートした更木地区の養蚕事業=2018年6月
管理に課題、飼育頭数の4割

 北上市の更木ふるさと興社(小原孝也代表取締役)は、2018年度に関係機関・団体と連携して初めて取り組んだ養蚕事業の実施結果をまとめた。開始初年度は約17万3000頭の蚕を飼育し118キロの繭を生産。飼育頭数に対する繭の生産割合は4割程度にとどまった。同興社は「開始初年度とあって手探りの飼育が続いた」と飼育管理が難航した1年を振り返り、19年度は「繭に仕上げる割合を高めたい」と意欲を新たにしている。

 岩手大発のベンチャー企業・バイオコクーン研究所(盛岡市、所長・鈴木幸一同大名誉教授)などと連携し、同研究所が生産する健康食品へ更木地区が原料を供給する新たなビジネスモデルの一環。養蚕業の復活・再生と科学技術のコラボレーションによる新産業創出と地域活性化を目指す「養蚕イノベーション創出プロジェクト」としてスタートさせた。

 同興社は18年度、約3・5ヘクタールの畑で桑を栽培するうち約1・5ヘクタールを養蚕に使用した。6~10月の5カ月間、4回にわたって計約17万3000頭の蚕を同研究所が整備したビニールハウス2棟で飼育。できた繭は群馬県の製糸会社に出荷され糸を採取後、残るサナギを同研究所に納入した。

 この結果、飼育頭数に対し繭として出荷した数の割合は、飼育時期によって1割から6割程度と大きなばらつきが出た。同興社は、温度・湿度の管理など飼育環境について課題を挙げ、「思った以上に温度と湿度の管理が難しく、病気になる蚕が多く出てしまった。餌を与えるタイミングも難しかった」と初年度を振り返った。

 このため19年度は、下からの湿気を遮断するためじか置きをやめて蚕専用の飼育台を用意するほか、地面を整地するなどして病気を防ぐよう飼育環境を見直す。新たに加わった地域おこし協力隊員も力に組み入れ、初年度と同規模の約17万頭を飼育し繭として出荷する割合を高めて230キロの繭生産を目指す。

 同興社の福盛田洋幸常務取締役は「飼育ハウスの周囲は田んぼのため湿気が多く入ったり、夏場の温度管理が難しく、繭のできる時期がばらつくなど環境制御や生産管理がうまくいかなかった」とし、19年度は「飼育環境を改善し、より多くの繭の出荷につなげたい」と意欲を示している。


養蚕イノベーション創出プロジェクト

 産学官民が連携して取り組むプロジェクト。戦後急激に衰退した養蚕業が国内で消滅の危機にひんする中、蚕やシルクに含まれる成分の健康や美容に対する注目が高まっていることを受け、バイオコクーン研究所が蚕を使ってサプリメント商品を製造・販売。蚕の餌となる桑の葉を使った製品製造に取り組む更木ふるさと興社が、原料調達と養蚕業再生のモデル的な役割を担う。桑の栽培拡大や繭生産の事業化などの体制整備に取り組み、養蚕を取り巻く多彩な内容で新産業創出と地域活性化を目指す。養蚕を行う地域おこし協力隊員として4月に20代の女性が着任し、活躍が期待されている。

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