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遺族と和解成立 盛岡地裁 グループホーム楽ん楽ん訴訟 法人側責任認め謝罪

緑川会との和解成立後、代理人弁護士と記者会見する八重樫さん(右)=20日午後3時ごろ、県庁

 2016年8月の台風10号による洪水で入所者9人が亡くなった岩泉町の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」の遺族17人が、入所者が亡くなったのは施設を運営する同町の社団医療法人緑川会の過失が原因だとして、同法人に損害賠償を求めた訴訟は20日、盛岡地裁(中村恭裁判長)で和解が成立した。和解条項には、法人側が避難させなかった法的責任を認め和解金を支払うほか、遺族らへの謝罪などが盛り込まれた。

 同日に同地裁で開かれた和解協議には、原告側から遺族3人と代理人、被告側から同法人の佐藤弘明常務理事と代理人が出席。和解条項を確認し、成立した。

 和解条項には▽亡くなった入所者と遺族らへの謝罪▽あらゆる災害を念頭においた避難計画の策定▽利用者の安全確保を第一とした施設運営―などが盛り込まれた。原告側の意向により、和解金額は非公表。佐藤常務理事は協議後に報道陣の取材に応じ、「間もなく3年がたつが、亡くなった利用者や遺族には大変申し訳なく思う。和解は成立したが、一生かかっても償いきれない」と声を詰まらせた。

 和解成立を受け、県庁で記者会見した原告代理人の吉江暢洋弁護士は「法人が法的責任を認めたことで、勝訴に近い和解になった」と評価。原告の1人で母チヤさん=当時(95)=を亡くした埼玉県所沢市の八重樫信之さん(75)は「次の命日までに終わらせたいという思いがあり、納得できない面もあったが、和解できてほっとしている。今回のことが、災害発生の危険性について考えるきっかけになれば」と願った。

 台風10号は16年8月30日夕、大船渡市付近に上陸。楽ん楽んには近くを流れる小本川の氾濫により土砂が流入し、入居者9人全員が死亡した。犠牲者9人のうち6人の遺族17人が、入所者が死亡したのは法人が入所者の避難を怠ったのが原因として、法人に1億1145万円の損害賠償を求めていた。

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