北上・西和賀

先人の知恵 随所に 民俗村 かやぶき屋根修復見学会【北上】

屋根を触って美しくそろえられたカヤの感触を確かめる参加者

 北上市立花のみちのく民俗村は10日、敷地内にある市指定文化財「旧菅原家住宅(豪雪農家)」のかやぶき屋根の修復作業に関する見学会を現地で開いた。ふき替えの様子を間近で見学した参加者は、昔懐かしい古民家の風情を感じながら古人の暮らしぶりに思いをはせた。

 同家は西和賀町大沓に明治時代後期に建てられたとみられる農家の住宅で、市が所有者から譲り受けみちのく民俗村内に移築・復元。建物の床面積は約160平方メートル。直家(すごや)と呼ばれる形状の民家で屋根は寄せ棟造り。屋根に勾配をつけたり、雪の重みに耐えられるよう船枻(せがい)造りと呼ばれる工法を軒に施すなど豪雪地帯ならではの工夫が随所に見られる。

 見学会は午前と午後の2回行われ、市博物館の職員や工事を担当する職人から説明を受け、修復途中のかやぶき屋根を間近で見学した。このうち午前の部には約20人が参加。参加者は実際に工事現場に入ってふかれたカヤを触るなどして切りそろえられた美しい屋根を眺めた。

 屋根の修復は7月から本格的に始まり、最盛期には秋田、宮城、福島3県の職人8人と作業員4人の計12人が作業に従事。解体後、下から上に向かってカヤをふく平ぶきと呼ばれる作業を経て、現在は屋根の一番上の部分を形作る棟造りに入り、作業は終盤を迎えている。材料は宮城県石巻市産のヨシ約16トンと、旧菅原家住宅解体時の屋根材料を一部再利用している。

 佐藤茅葺(かやぶき)店(秋田県横手市)に勤務する屋根葺替職人古屋睦子さん(47)は「屋根に線を引けるわけではなく、目や感覚で勾配や屋根の厚みを決めるので、作業は難しく熟練の技が必要。自然素材なので壊すと土に返ったり、草を刈ってまた作ることができるのが面白い」と魅力を語った。

 参加した花巻市上小舟渡の不動産業瀬川正則範さん(70)は「今ではほとんど見ることがなくなったかやぶきの家を写真として記録に残したくて参加した。自分も昭和30年代前半まではかやぶきの家に住んでおり、懐かしく、昔の人の知恵が大きいものだと感じた」と話した。

 市は2019年度、事業費約4100万円を投じて、母屋などのかやぶき屋根(総面積360平方メートル)を入れ替える工事を行っている。

momottoメモ

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