花巻

賢治の献呈署名記入 「春と修羅」初版本公開 花巻・記念館23日まで

賢治の献呈署名が確認できる「春と修羅」初版本
文字丁寧かつ明瞭

 宮沢賢治の献呈署名が記入された心象スケッチ「春と修羅」初版本の公開が花巻市矢沢の宮沢賢治記念館で始まった。花巻農学校(現花巻農業高校)教諭時代の教え子だった安藤(旧姓櫻羽場)寛に、賢治が署名した上で贈呈した一冊。これまで一般公開されたことのない資料で、ファンの注目を集めている。23日まで。

 寛の求めに応じたという献呈署名は鉛筆書きで、贈られた「五月十三日」の日付や「呈」「櫻羽場寛君」などの文字が記されている。今年5月に寛の末子・廣田ゆき子氏が花巻市に寄贈した段階では傷みが激しかったものの、約3カ月間かけた修復作業で実物展示に耐え得るまでに整えられた。本文は約300ページに上るが、落丁はないという。

 賢治渾身(こんしん)の一冊を贈られた寛は1908(明治41)年、稗貫郡湯口村(現花巻市中根子)生まれ。稗貫農学校(後の花巻農学校)に入学して賢治の下で学び、卒業後は教職の道を歩んだ。賢治の短編童話「台川」などに、2人の親密さを伝える記述が見られる。

 署名の文字は丁寧かつ明瞭で、心を通わせた教師と教え子の関係をうかがわせる。同館学芸員の牛崎敏哉氏は「(春と修羅が世の中に)出たばかりでうれしかったのだろう。賢治の高揚感が伝わる貴重な資料だ」と指摘する。

 「春と修羅」は24(大正13)年4月の自費出版本で、1000冊(定価2円40銭)作製された。一部で高い評価を受けたものの売れ行きはいまひとつで、残った本は賢治が引き取り、近しい人に贈られたりもした。1000冊のうち30~40冊程度が現存するとみられるが、署名入りは非常に珍しいという。

 展示は午前8時30分~午後5時。期間中無休。問い合わせは同館=0198(31)2319=まで。

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