奥州・金ケ崎

最後の7年に迫る 高野長英記念館 秋の企画展 脱獄後の足跡、資料で紹介【奥州】

企画展「長英の隠れ家」で展示されている資料。長英が伝えた薬にまつわる火鉢など、逃避行にゆかりの品々が並ぶ

 奥州市立高野長英記念館の2019年度秋の企画展「長英の隠れ家~各地に残る足跡~」は、同市水沢中上野町の同館で開かれている。江戸幕府を批判したとして投獄された水沢出身の長英(1804~50年)の脱獄後がテーマ。各地に潜みながらも蘭学者として生き続けた生涯最後の7年に、資料を通して迫っている。11月17日まで。

 複製を含む長英の訳書や著作、潜伏先に残された品々など24点を展示。高野長英顕彰会がゆかりの地を探訪してまとめたパネルも掲げ、長英がこの時期に関わった人物や土地も紹介している。

 長英は鎖国政策への提言をまとめた著作「夢物語」を幕府に問題視され、いわゆる「蛮社の獄」で投獄されたが、1844(弘化元)年に火災に乗じて江戸の牢屋敷を脱走。恩人や門弟らを頼り、江戸をはじめ関東や東北、近畿、北陸、四国などを逃げ歩いたとされる。最後は江戸で追っ手に迫られ自害した。

 大間木(埼玉)で長英をかくまった門人の高野隆仙は後に幕府側の追及を受けたが、100日の拷問に耐え口を割らなかった逸話が残る。この地に残された長英の物とされる巾着が展示されている。

 また宇和島(愛媛)では、縁を得てひそかに藩主伊達宗城に重用され、見識を生かし砲台の建設や蘭学指導に尽力。展示にはこの時期に翻訳した蘭書も並ぶ。

 長英の逃避行は各地に伝説が残る。陶器の火鉢も関連のある一品。長英が尾張(愛知)で急病の旅人に薬を与えて救った際、旅人たちが故郷のなまりを話しているのに気付き、涙を見せたという。火鉢にはこの薬の名前「漢蘭丸」が刻まれている。

 同館の及川彩学芸調査員は「長英の脱獄は有名だが、その後と死までの足跡はあまり知られていない。改めて何をしていたかを伝えたい」と来場を呼び掛けている。

 11月4日までの期間中は、国の重要文化財に指定されている所蔵品13点も公開。長英の指名手配に使われた「手配触書」など、企画展に関連する資料も含まれる。

 同館は月曜と、月曜が祝日の場合は翌日の火曜が休館。開館時間は午前9時~午後4時30分。

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