北上・西和賀

自身の体験ベースに 復元納棺師・笹原留似子さん 初小説「怪談研究クラブ」発刊【北上】

自身初の小説「怪談研究クラブ」を発刊した笹原さん

 北上市の復元納棺師笹原留似子さん(47)は、初の小説「怪談研究クラブ」(金の星社)を発刊した。第1弾のテーマは「人魂」。自身の幼少期からの体験をベースに、怖い話を織り交ぜながら日本人として大切な風習や道徳などもつづった。今後も順次、各テーマで発刊を計画している。

 笹原さんは、死者が家族と最良の別れができるよう遺体を元に近い状態に戻す処置を施す復元納棺師で、東日本大震災時にはボランティアで300人以上を見送った。全国各地で「いのちの授業」を展開し、死に現実感のない青少年たちに「死に直面した話、死の意味をきちんと伝えなければいけない」と思い立ち、日常業務や講演活動、親の介護などの傍ら1年半かけて第1弾を発刊した。

 作中で主人公の小学4年生・るい子は霊感があり、友達と怪談研究クラブを結成。自身や家族、仲間の家族が見た「火の玉」のエピソードを記し人魂との違いや人魂の種類も紹介している。

 作中に登場する「天狗じいさん」や復元納棺師のおばから大切なことを学んでいく内容。「霊場に興味本位で行ってはいけない」「屋敷蛇は先祖に選ばれ、家に災が起きないよう特別な力で守ってくれている」「四十九日間は亡くなった本人が家にいるといわれ、足音や物が落ちたり不思議な現象が起きやすい」と記述し、のろいのわら人形に関しては「人をのろう時は相手と自分の墓穴2つを掘っておけといわれる。人をのろうのは命懸けの行為で、やらない方がいい」と警鐘を鳴らし、命の大切さも訴えている。

 174ページで初版は5000部発行。文字も大きく、専門用語も振り仮名入り。挿絵は笹原さん自身が描いた。子供はもちろん、高齢者まで幅広い世代が読みやすいよう編集された。

 笹原さんは「死者を送り出すこと、納棺にも東北、岩手にはさまざまな風習があり、そこには意味がある。民俗風習の中から道徳、モラルが生まれるが、廃れてきた」と危機感を示す。今回、発刊した本には単なる怖い話ではなく風習や道徳、モラル、科学的根拠も盛り込んだ。「民俗、風習との関わり方について『ああ、そうか』と思ってもらえれば。大人にも子供心で『わくわく』読んでほしい」と話している。

 第1弾は1300円(税別)で、全国の書店で販売中。2020年2月には第2弾「死者からのメッセージ」を発刊予定。数年かけて「金縛り」「三途の川」「四十九日までの現象」など執筆し、第5弾以上となる見込み。

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