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無断採取 重文で2点 平泉・柳之御所遺跡出土品 指定後の行為と確認【岩手】

県教委の調査で無断切り取りが判明した「火舎」(左)と「花瓶」=県教委提供
▲サンプル採取前の火舎=県教委提供

 県立博物館の60代の男性学芸員が出土品の金属製品の一部をサンプリングのため所有者に無断で切り取っていた問題で、県教委は16日、国重要文化財でいずれも平泉町内の遺跡から出土した76点を調査したところ、柳之御所遺跡出土の「火舎(かしゃ)」「花瓶(けびょう)」の2点について無断切り取りが判明したと発表した。県教委は同日付で文化財保護法の規定に基づき文化庁長官に2点の毀損(きそん)届を提出した。

 県庁で開かれた県教委定例会で調査の経過報告(中間報告)があった。

 重文の76点(県所有13点、町所有63点)については5932点の調査対象資料のうち優先して調査を進めてきた。県外の専門機関でX線撮影し、外部有識者の指導を得てサンプル採取の痕跡を確認。切り取り行為承諾の有無は聞き取り調査に加え、所有者らが埋蔵文化財出土後に発刊する調査報告書に化学分析結果を掲載している場合は承諾有りとして扱った。

▲サンプル採取で切り取った痕跡を示す火舎のX線写真=県教委提供

 その結果、町所有分については切り取り行為が確認されなかったが、県所有の火舎、花瓶の計2点については2010年の重文指定後に無断切り取り行為が行われていたことが判明した。

 これまでに切り取り行為が確認されていた「内耳鉄鍋」についてはX線撮影で2カ所の痕跡が確認されたが、重文指定前の1990年頃に承諾の下に科学分析、指定後の2012年には毀損修理と保存修理が行われ、いつの時点の痕跡か特定できないため調査継続とした。

 同館学芸員は、火舎、花瓶について無断切り取りを認め、「分析データを蓄積したり、研究への活用を図ったりと保存するためだった」などと述べ、重文の認識はあったが、採取については深刻に考えていなかったという。処分は現段階では行わないが、県警に事案について情報提供している。

 このほかの文化財資料についても学術情報収集のためサンプル採取を行った資料があると供述。県教委はさらに調査を進めていく方針で、県外の3道県、4遺跡から出土した重文68点については今年度内に調査を進め、残る5800点弱の資料は今後所有者と調査方法を協議して実態を明らかにする。

 県教委の佐藤博教育長は同日の定例会で「誠に残念であり遺憾だ。引き続き調査を進め、再発防止、コンプライアンス徹底に努めていく」と述べた。

 平泉町の青木幸保町長は中間報告を受け「残念だ。今回の行為で重要文化財の価値が失われた訳ではないと考えている」とのコメントを出した。

管理監督者対象の研修も 再発防止策示す・県教委

 県教委は中間報告で、2014年の無断切り取り行為等事案発覚当時の関係機関の対応についても調査結果や再発防止策を明らかにした。

 事実解明に至らず結果的に不十分な調査に終わり、他の事案の調査が行われなかった要因は、調査が県立博物館任せになり運営を統括する文化振興事業団の組織的機能が十分に発揮されない状況があったとし、調査を積極的に指導・支援すべき県教委の姿勢が必要だったと判断した。

 再発防止策として、同館、同事業団、県教委の3機関に加え市町村関係者を対象に文化財への意識を高めるためのモラル研修、当事者意識や意識の低さが適切な組織機能を発揮させられなかった反省に立ち管理監督者を対象とした組織マネジメント研修などを挙げた。研修は文化庁や外部有識者の協力を得て年明け早々にも実施する方向で検討している。

 また早い段階での情報共有を図るため、博物館に限らず県立の社会教育施設に範囲を広げ、早期に情報共有できる体制を構築していくとした。

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