地シードル キリッと爽快、フルーティーな香り
リンゴを発酵させて造る発泡酒、シードル(ノンアルコールもあります)。欧米では古くから飲まれているポピュラーなお酒だが、北米では近年、健康志向やローカルブームの高まりで人気が再燃。日本でもじわじわ人気が高まっているという。中でも注目されているのが全国各地で造られた地元産リンゴ100%の“クラフトシードル”。リンゴの産地、長野や青森では個性を競い合うように銘柄が増えており、県内でもここ数年でワイナリーやブルワリーが参入。ふじやつがる、ジョナゴールドなど自慢のリンゴを使った県産シードルが誕生している。
花巻市大迫で2016年に醸造を開始した「亀ヶ森醸造所」は、ブドウ農家とリンゴ農家が立ち上げたワイナリー。シードルを担当するのはリンゴ農家の高橋英則さん。自然のおいしさを生かしたシードル造りに土作りから取り組む。シードルはじっくり発酵させる辛口タイプで、無ろ過ならではの豊かな味わいとキレのある酸味が特徴。シュワシュワとした優しい泡とともにリンゴの味が広がる。お客さんからも「甘くなくて新鮮」「すっきりしておいしい」と評判は上々。リンゴの新しい楽しみ方が広がっている。

シードル文化が根付くフランスではムール貝やガレットがつまみの定番というが「和洋中どんな料理にも合う。飲み方に決まりはないので自由に楽しんでもらえたら」と高橋さん。同社のシードルを提供する飲食店オーナーの阿部洋祐さんは「シードルの程よい酸味はだしの味と相性がいい。肉じゃがやおでん、漬物などの家庭料理にもおすすめで、食の楽しみが広がる」と魅力を語る。
シードルにはポリフェノールやクエン酸、ペクチンが含まれているほか、免疫力を高め、美容効果もあるビタミンやミネラルが豊富。グルテンフリーでプリン体もほぼゼロというヘルシーさも受けている。
昨年10月、ワイン&シードルを製造する「アールペイザンワイナリー」が花巻市に新設されたほか、一関市で「いわて蔵ビール」を展開する世嬉の一酒造は昨年地元産リンゴのシードルを初仕込みし、ビアバーでの提供を開始。ボトルも今年から売り出す。紫波町ではアメリカンスタイルの「紫波サイダリー」が今年3月の発売を目指しオープンする予定という。
新たな銘柄も生まれ、“岩手シードル”は今後ますます盛り上がりをみせそう。
1.「ポムスパークリング」くずまきワイン(葛巻町)
2.「ベアレンドライサイダー2019」ベアレン醸造所(盛岡市)
3.「シードル原酒2019」※販売は1月中旬(予定)まで
五枚橋ワイナリー(盛岡市)
4.「星の果樹園シードルドライ」エーデルワイン(花巻市)
5.「シードルミックス」亀ヶ森醸造所(大迫町)
6.「束稲山麓シードル」平泉ワイナリー(平泉町)
7.「りんご屋まち子のアップルシードル」 THREE PEAKS(大船渡市)
■取材協力
亀ヶ森醸造所 090・2873・6939
〼~かまどのある家・酒をよぶ食卓~ 019・651・1510
(参考文献)「シードルの事典」一般社団法人日本シードルマスター協会 小野司監修 誠文堂新光社
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