キオクシア稼働へ 多方面に経済波及効果 北上
北上市北工業団地に建設された半導体大手・キオクシア岩手(旧東芝メモリ)は、2020年に稼働する。今年前半には、データセンターやスマートフォン、自動運転向けを中心に需要拡大が見込まれる3次元フラッシュメモリの出荷が始まる見通し。総投資額1兆円を超える巨大プロジェクトが始動し、市内外の多方面に大きな波及効果をもたらしそうだ。
キオクシアの新製造棟は18年7月に着工し、19年10月竣工(しゅんこう)。ピーク時には約2000人の作業員が工事に携わった。敷地面積約15万平方メートル、高さ約50メートルの鉄骨造り5階建て。延べ床面積約20万平方メートルで、キオクシア製造棟では三重県の四日市工場を含め最大規模。
設備搬入は既に終了。地元採用した従業員と四日市工場、本社からの出向を含め800人余りの体制で生産ラインの立ち上げ作業や稼働開始に向けた研修、準備に当たっている。
20年度は大卒など45人、高卒86人の新卒者を採用。従業員は今春には900人程度になり、最終的には1000人を超える見込み。設備面を含めた総投資額は1兆円を超える見込みで、協業するウエスタンデジタルジャパンと共同出資する。
立地に伴い、市は北上工業団地の21・4ヘクタール拡張へ整備中。渋滞緩和へ周辺道路や交差点改良などのインフラ整備も並行して進めている。市商工部は「計画通り20年度中の完了を目指している」という。
県は、直接雇用や建設関連投資による経済波及効果は県内全域で約3240億円と試算。税収面や雇用創出などに多大な好影響が見込まれ、関連企業の新たな立地と既存企業の業容拡大への期待から、同社に19~23年度の5年間で過去最大規模となる総額50億円を補助。市も20~29年度の10年間で総額25億円を補助する方針だ。
市は「投資額は今までの規模とは比べられないレベル。北上市の過去の誘致企業の総投資額よりはるかに上。25億円の補助は固定資産税や法人税などの税収効果で十分カバーできる」(同部)と説明する。
市は、キオクシア立地による市内の操業前の経済波及効果は建設などの直接効果140億円、建設資材発注などで生じる間接効果145億円、就業者の地元消費などに伴う2次波及効果16億円の計301億円と試算(地元発注率5%で換算)。操業後は波及効果がさらに広がり、製造品出荷額も東北トップクラスになると予想する。
市は、半導体製造装置や設備メンテナンス、ガスなど20社を超える関連企業の立地動向を確認。「食堂の運営や弁当、事務機器、クリーニングなどの地元発注もあり、波及効果は広がってきている」(同部)とみている。
キオクシア岩手の米倉明道社長は2棟目以降について、「1棟で終わらせるのは効率が良くない。2棟目以降も視野に入れ今後も検討していく状況に変わりはない」と説明。具体的時期は市況次第とみられる。