一関・平泉

「1年無事に」願い届ける 東山住民ら 磐井清水若水、中尊寺へ【一関・平泉】

「六根清浄」「御山繁盛」の言葉を唱えながら中尊寺の月見坂を上る一行。本堂までもう少し

 一関市東山町松川の磐井清水で新年最初にくんだ水を平泉町の中尊寺まで運ぶ故事を再現する「磐井清水若水送り」は、1日に行われた。底冷えする厳しい寒さの中、令和最初の若水送りでは、子供から大人まで124人が20キロにわたる道のりを練り歩き、1年の多幸や無事を願い寺に若水を届けた。

▲千葉知幸さん(右)の介添えで若水をくむ長男の龍生ちゃん(中央)。「こぼさずに水をくむことができて良かった」とにっこり

 地域住民らが見守る中、松川市民センター近くにある磐井清水で行われた若水汲(く)みの儀で、介添え役の千葉知幸さん(51)=同町松川=と稚児役の長男龍生ちゃん(6)がおけに水をくみ上げた後、狩衣(かりぎぬ)や、桧笠(ひがさ)に白装束を身に着けた一行が午前1時30分に出発した。

 沿道に積雪はなかったが、時折小雪が舞い、冷たい風が吹き付ける条件下、約2キロごとに設けられた番所で休憩を取りながら奈良坂、東岳両峠を越え、約6時間後に中尊寺に到着した。

 本堂前で行われた若水進上の儀では、僧侶の出迎えを受け、安東正利実行委員長が若水を献上。山田俊和貫首は「皆さんで協力しながら運び届けていただき本当にありがたい。昨年はいろいろな災害があったが、今年こそ私たちにとって何事もなく過ごすことができる年であってほしい」と願った。

 若水が入ったおけは、道中に寒さで凍り付き、僧侶らがふたを外すのに一苦労するほど。千葉さんは「令和最初の若水送りで介添えという大役を務めることができて光栄。無事に届けることができた」と安堵(あんど)し、安東実行委員長は「新年は穏やかな年になってほしい」と話していた。

▲中尊寺本堂前で行われた若水進上の儀。山田貫首(左)に若水を無事に届けたことが報告された
厳寒の20キロ、年男挑む

 厳寒の中で行われた「磐井清水若水送り」。10年ぶりとなった今回の取材は年男ということもあり、参加者と共に全行程を歩いた。みんな「今年は積雪がなく、例年より歩きやすかった」と口にしていたが、初挑戦の身には非常に困難な道のりで、目的地の中尊寺にたどり着くと、故事の再現行事に立ち会えた喜びとともに達成感が湧き上がった。

 最初の難関は一関市東山町松川と同市舞川の境に立ちはだかる奈良坂峠。きつい上り坂が続く午前2時ごろには小雪が舞い、底冷えする上に風が容赦なく吹き付けた。「やめよう。(実行委員会が用意する)バスに乗り込もう」と思ったのは1度や2度ではなかったが、平然と歩き続ける地域の子供たちの頑張りに背中を押された。

 峠のてっぺんに達すると今度は下り坂が続く。上りで汗をかいたため、あんなにつらく感じた風が心地よい。地元の人たちが用意してくれた甘酒や玉こんにゃくのおかげで平泉町境の東岳峠は難なく越えることができた。

 高館橋で北上川を横断し中尊寺通りを抜けると、月見坂の入り口に到着。20キロ歩いたことを忘れ、最後の坂を上る一行の姿や若水を献上する場面に何度もシャッターを切った。

 2003年に始まって以来、実行委をはじめ、寺関係者や沿道の住民ら多くの人の協力で続けられてきたことを改めて実感させられた。実行委では、若者を登用して体制強化を図っていくという。800年以上前をしのばせる伝統行事に今後も注目していきたい。(報道部・中舘勝弘)

▲若水が入ったおけを運ぶ白装束の担ぎ手

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