北上・西和賀

「更木ブランド」全国へ 絹織物 一貫生産 松岡さん情熱燃やす【北上】

工房をバックに完成したばかりのストールを手にする松岡さん

 養蚕の世界に魅了され北上市更木地区で研鑚(けんさん)を積む同市の地域おこし協力隊員・松岡冴さん(26)=東京都出身=が、蚕が生み出した繭から糸を取り出し、染色や機織りなどの作業を経て絹織物を紡ぐ作業に注力している。手間暇かかる作業ながら、糸から製品まで一貫して独自でやり抜こうとする姿が光る。将来的にはオール更木原料を使って「更木ブランドの全国発信を目指したい」と意欲を燃やす。

 松岡さんは、京都造形芸術大で染織を学んだ後、民間企業で2年間、生地の新商品開発やデザインなどに従事。大学時代に独学で養蚕を学び、卒業研究として自身で飼育した蚕から取った生糸で反物を織り、着物を仕上げた経験があるほど強い情熱を持っている。

 養蚕業の復活を目指すプロジェクトに取り組む更木地区の更木ふるさと興社を活動拠点に、2019年4月から同協力隊として活動を開始。11月までは蚕の飼育技術習得に励んだ。その後、つてを頼って同興社の近くにある倉庫を個人で借り、「さらのき工房」と名付けた染織工房を12月に開設。技術講師の協力を得て、糸をより合わせて太くする紡ぎ機や布を織る機織り機など染織の道具や機器類を工房にそろえた。

 同興社が生産する繭の中でも出荷できないB級品を原料として利用し、紡ぎ機を使い繭から取った繊維をより合わせて糸を紡ぎ、その糸を木枠に巻いてから整経機と呼ばれる機械に掛けて縦糸の長さと本数を決める。その後、1・27メートルを1巻として1000巻する綛上(かせあ)げと呼ばれる工程を経て好みの色に染め上げる。最終的に織り機で絹製品に織り上げるまで手間のかかる工程が続く。初めてとなる今シーズンは、約2カ月かけ長さ120センチ、幅40センチのボリューム感あるストールを織り上げた。

 今後は、流通経路に出ることが少ない皇室御用達の貴重な蚕品種「小石丸」を主に使用し、希少性を重視したマーケティングを行いたい考えで、「更木産の絹糸を更木産の天然染料で染めて更木ブランドを作り出し、全国に発信していきたい」と更木ブランドの確立を目標に掲げる。将来的に養蚕農家として独立し繭の生産からシルク製品の製造・販売までを一貫して行うことを目指す。

 松岡さんは「蚕の飼育は餌となる桑の確保や運搬、飼育環境の整備など予想以上に重労働が多く、体力と経験の不足を痛感した日々だった。活動を通じて養蚕や更木地区をアピールしてきたつもりだったが、いまだ知名度は低く課題を残している」と反省しつつ、「地域の協力で工房を立ち上げることができたので、来年度は地域と交流しながら染織という得意なジャンルを生かして、一般向けに染色体験イベントを開催したり、SNS(インターネット交流サイト)で情報発信するなど養蚕を復活させている動きを外に向かって発信していきたい」とアピール。夢は始まったばかりだ。

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