奥州・金ケ崎

最後の仮設撤去まで継続 沿岸南部で訪問活動 興性寺(奥州・江刺)

興性寺が主体となった被災地への訪問活動。仮設住宅への見舞いを今年も続ける(興性寺提供)
東日本大震災から9年

 奥州市江刺男石の興性寺(司東和光住職)は東日本大震災後、本県沿岸南部を中心に仮設住宅の見舞い活動を継続している。全国から寄せられた善意を基にした心の支援。司東住職(71)は「苦しみから立ち直ろうとしている人もいまだ多いと忘れないことが大切」と、最後の仮設住宅が撤去されるまで続ける考えだ。

 震災直後から避難所での支援活動に取り組んできた。仮設住宅でも不自由な暮らしが続いていることを受け、2012年7月に訪問を始めた。

 寺や檀家(だんか)、東京都の僧侶、市内の他の支援者らと手分けして各戸を訪問し、見舞い品を届けてきた。集会所では震災による死者への法要と法話、茶会を行い、演芸が伴うこともあった。これまで陸前高田市や大船渡市など延べ約2万2500世帯、多い年は4日間で約1450世帯を訪ねた。

 見舞い品の選定には被災者を思って工夫を凝らしている。通常の暮らしの実現に願いを込めたときは、年賀状や日記帳、家計簿などを贈った。夢のある宝くじは特に喜ばれたという。

 仮設住宅内での供養を頼まれたことも多かった。司東住職は「力仕事のボランティアはできなくても、僧職でないとできないことがあった」と振り返る。

 寄付などで活動を支える全国の支援者の励ましと、被災者の感謝の便りを受けており、広報紙にまとめて両者に伝えることで気持ちを橋渡ししてきた。毎年ボランティアが減る中、「ずっと来てくれてありがとう」との声を受けている。

 今年も3月11日に実施する。司東住職は「被災者に笑顔や会話が増え、変化を感じている。全国からの支援で『一人ではない』と思っていただけたのでは。活動を通して、慈悲を交換し互いを思う社会であればと感じている」と語る。

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