阿弖流為、熱く激しく めんこい美術館 佐藤紫雲さんが書作展【奥州】
奥州市水沢東大通り2丁目の書家佐藤紫雲さん(65)の書作展「蝦夷(えみし)の長 阿弖流為(あてるい)」は、30日まで同市水沢佐倉河のめんこい美術館で開かれている。天井からつるされた縦5メートル、横7メートルほどの作品「賊奴奥区」をはじめとする大きな作品が並び、訪れた人たちを圧倒している。
16点が展示され、▽蝦夷の住む日高見国胆沢▽朝廷の蝦夷像▽阿弖流為登場、巣伏の戦い―といった構成。「淡墨によるロマンチックな作風」で活動してきた佐藤さんだが、今回は強い感情を表現しようと濃墨や盛り上がるようなボンド墨、真っ赤な墨で激しく作品を仕上げた。
この中で「夷 日本書紀 景行天皇 日本武尊に日ふ」は真っ赤な墨で「夷」を書いた上から日本書紀から景行天皇が日本武尊に東征を命じた内容を濃墨で書き下した。「今までは淡墨で1文字を書くのが作風だったが、この作品では多くの文字を配した。新しい境地を見た思いだ」と語る。
また「朝廷側の5万の軍勢を阿弖流為らが800の軍で討った巣伏の戦いでは、書き終えた後、どうしても書きたくなって『阿弖流為 母禮よ』と大きく書いた」という連作もある。
佐藤さんは「新たな書への挑戦に当たって阿弖流為が奮い立つようなものを目指した。この書作展を最後にしようと考えていたが、作品を作るうち発見も多く今後への意欲も湧いてきた」と、書家の家に育つ中で培った作風とは違った新たな境地を見いだした。
書作展は午前9時~午後5時(最終日は3時)。火曜日休館。