一関・平泉

名物店主 団子残し空へ 郭公屋・千葉晴夫さん逝く 観光地に喪失感【一関】

今季営業開始の前日、団子を届ける籠をいとおしそうに見詰める千葉さん。背後の壁は一面観光客から届いた手紙や写真で埋め尽くされていた=19日、一関市厳美町の郭公屋

 一関市厳美町の名勝・厳美渓畔に店を構える「郭公(かっこう)屋」の千葉晴夫(ちば・はるお)さんが28日、脳出血のため市内の病院で死去した。73歳だった。明るく飾らない人柄で“空飛ぶ団子”で知られる同店の4代目を務め、地域の人たちはもとより広く国内外の観光客からも親しまれた千葉さんの突然の訃報に、多くの人たちから悲しみや追悼の声が上がっている。

 同店は1878(明治11)年創業で、渓流を挟んだ対岸の観光客へ移動式の籠で団子を販売するのは「郭公じいさん」と呼ばれた初代千葉酉吉さんが考案。晴夫さんは幼少時から先代の母みさをさんや来店客から「郭公じいさんの団子を残すのが天命だ」と聞かされ、店を継いでからは母の教えを胸にどんな時も笑顔で来店客に接してきた。

 近年はインバウンド(訪日外国人旅行者)増加に先駆け世界各国の旗を準備し、対岸の外国人に団子を届ける際は国の旗で合図するなどアイデアあふれるもてなしが喜ばれた。人柄を知って店を訪れる観光客との記念写真にも快く応じ、店の2階にある籠の受け渡し場所は全国各地から届いた写真や感謝の手紙で壁一面が埋め尽くされている。

 晴夫さんは今季営業初日となった20日以降、これまでと変わらず店に出ていたが、27日朝に自宅で倒れ病院に搬送。手術で一命を取り留めたが翌朝容体が急変し帰らぬ人となった。

 突然の訃報に晴夫さん方の本家に当たる千葉東さん(62)は「店を開いた20日にメールでやりとりしたのが最後になってしまった。いつもお客さんに喜んでもらうことを考えていた人だった」と肩を落とした。

 厳美渓レストハウスを経営する岩井確司さん(68)は「地域での盆踊りや野球大会なども率先してくれた人で、もてなしの姿勢は店を構える者として師匠のような存在だった。これからは地域のみんなで厳美渓を象徴する晴夫さんの志を継ぎ、厳美を盛り立てていかなければ」と悼んだ。

 晴夫さんの後継者となる次男陽介さん(42)は「一言でいうと明るい父だった。父と同じようにとはいかないかもしれないが、自分らしく地道な作業の繰り返しで伝統の味を受け継いでいきたい」と語る。

 

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