北上・西和賀

知人へ贈った「花便り」 窮屈な日々の糧に 絵手紙講師阿部さん【北上】

制作した大型の絵手紙を披露する阿部さん(右)。どの作品を譲ってもらおうかと品定めする渋谷さん

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ごうと外出自粛の緊張感が続く中、絵手紙で人の心を温めている女性が北上市にいる。新型コロナの影響で仲間と4月に計画していた作品展は中止せざるを得ず披露の場を失っていたが、自宅に飾りたいと申し出た知人に作品をプレゼントし喜ばれている。外出がままならない中、思いを伝える絵手紙は受け取った人の窮屈な毎日を豊かにする糧となっている。

 絵手紙の制作に取り組むのは同市中野町に住む絵手紙講師阿部昭子さん(78)。市内4カ所で絵手紙教室を開設し、受講者とともに2年に1回のペースで作品展を市内で開催。今年は4月に開催を予定していたが新型コロナの影響で断念した。

 一方、阿部さんと15年ほど前に地域のウオーキンググループで知り合った同市鬼柳町の主婦渋谷孝子さん(80)は、阿部さんの絵が気に入り次第にファンとなって絵手紙にもほれ込むようになった。6年ほど前、書道用紙に描いた大型の絵手紙をもらい、自室に飾って眺めるのを楽しみにしていた。

 飾っていた作品をそろそろ休ませたいと思っていた渋谷さんの元に、阿部さんから作品展中止の知らせが入った。この際、「新しい作品を譲ってほしい」と渋谷さんから相談を受けた阿部さんは、自宅で眠りそうになっていた作品を再びプレゼントすることに快諾した。

 同市芳町の北上地区合同庁舎で4月初旬に待ち合わせた2人。阿部さんが書道用紙に描き上げた長さ1・5メートル前後の作品十数点をテーブルに広げた。品定めする渋谷さんが選んだ作品は、梅、桜、菜の花、フクジュソウ、スイセンなどの花の便りから春の便りが届く喜びをしたためた一品。「新型コロナ騒ぎで気持ちが沈みがちになっている時期だけに、花の便りは気持ちを元気にしてくれ、優しく訴えかけてくれる」と顔をほころばせる。

 絵手紙を始めて25年ほどになるという阿部さんは「『下手でいい』という一言を聞き、自己流で始めた絵手紙。思ったことを描くことができるので、気持ちが伝えやすい。肩肘張らずに描く手紙なので、思いが伝わりやすく、和むのかもしれない」と魅力を推し量る。

 緊急事態宣言の発令で外出自粛がしばらく続きそうな毎日に渋谷さんは「阿部さんの絵手紙には、物を大切にすることや我慢することの大切さを訴えるメッセージが詰まっている気がする」と作品を眺めて気持ちを落ち着かせている。

▲渋谷さんが、阿部さんから譲り受けた大型の絵手紙作品。大きさは横1.5メートル、縦40センチほど。

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