北上・西和賀

「西わらび」ブランド強化 農水省にGI登録申請【西和賀】

GI登録に向けて申請された「西わらび」

 山菜の生産者や販売事業者で組織する西和賀町の西和賀わらび生産販売ネットワーク(湯沢正会長)は22日までに、生産振興と知名度アップを目的として町内産ワラビ「西わらび」を地理的表示保護制度(GI)に登録するよう農林水産省に申請した。2020年度中の登録を目指す。町内では年々栽培面積が拡大しており、登録によって農家のさらなる生産意欲向上と「山菜王国」の名を内外に発信しブランド力の強化を図る。

 申請受理は14日付。「西わらび」は、町内で収穫されるワラビを原料とするワラビの水煮と定義。他産地のワラビと比べあくや筋が少なく、とろっとした独特の粘りとうま味が特長。太さ6ミリ以上、長さ25センチ以上を規格基準に、鮮度を重視し当日か前日の収穫物に限定している。

 本県西部に位置する同町に生育し、県内他地域で収穫されるワラビとの食味特性の違いから、古くから「西わらび」と呼ばれてきたことに由来。09年12月に商標登録(商標権者は町)されたことなどからブランド山菜として全国で注目されている。

 同町は山間地では珍しい稲作地帯ながら、かつては冷害常襲地帯であったため豊富な山菜資源、特にワラビはたるで大量に塩蔵し、雪に閉ざされる冬期間の食材とする食文化が江戸時代から根付く。農家収入の増加を目指し旧西和賀農協が1971年に山菜加工場を設置し、ワラビの水煮加工をはじめとする山菜の加工を行い、隣接地域への販売が本格的に始まった。「西わらび」の名で他産地品と差別化し、価格面でもより高値で販売していた。

 同町では、コメの需給バランスの改善を目的とした国の水田転作推進の動向を踏まえ、2001年ごろから転作田を活用したワラビ栽培に本格着手。08年には、生産者・集荷加工業者、行政等で組織する同ネットワークを設立し、栽培技術の向上等による転作田での一層のワラビ栽培の拡大と西わらびのブランド化を推進している。

 町内の転作田での栽培面積は、04年の8ヘクタールから19年には約51ヘクタールに拡大。町はさらなる生産量の増加を推進しており、今後も伸び続ける見込み。19年度の集荷量は15・2トンで、県内の市場や百貨店、生協のほか、06年から販売した郵便局ふるさと小包商品などとして年々大きく販売を伸ばしている。

 湯沢会長は「人口減少の中、西わらびの生産者は増え、転作田の栽培面積は50ヘクタールを超えるほど生産量も増えている。苗作りに成功し、有望系統を選んで質を高める努力も続けている。GI登録は、ブランド力を高める一つの手段としてわれわれを力づけてくれるので、早期の登録を望む」と期待する。

 農水省によると、県内では前沢牛(奥州市)と野田村荒海ホタテ(野田村)、岩手木炭(本県)、二子さといも(北上市)、浄法寺漆(本県等)の5産品が既に登録され、西わらびのほか甲子柿(かっしがき)(釜石市)、広田湾産イシカゲ貝(陸前高田市)、重茂肉厚わかめ、重茂産焼きうに(以上宮古市)の4産品が申請中。


 西わらびの生育環境 例年11月上旬には雪が降り始め、最深積雪が170センチを超える全国有数の豪雪地帯にある同町では、ワラビの根茎と新芽は他地域より長期間温度変化の少ない雪の下で越冬し、春になって雪解け水が生育地に染み込み、水蒸気となって生育地を十分に蒸し上げる自然環境の中で、他産地のワラビとは異なる特性を持って生育すると考えられている。同町の土壌のpH(水素イオン指数)は5・26(過去5年の平均)と生育に適した酸性土壌の環境下にあり、量的な面でも産地化できる要因となっている。

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