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最新動向、未来像は ウェブで専門家解説 県ILC推進協講演会

ILCウェブ講演会の講師を務めた(左から)山下氏、藤井氏、森氏(写真はウェブ画面から)

 次世代の大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」実現を目指す県国際ILC推進協議会(会長・谷村邦久盛岡商工会議所会頭)は24日、インターネット上で「ILCウェブ講演会」を開催した。専門家3人がILC誘致に向けた最新動向を説明するとともに、実現した場合の未来像などについても展望した。

 ILCをめぐっては、今年1月に日本学術会議のマスタープランに大型研究計画として選定されたが、速やかに推進すべきとする重点大型研究計画には選ばれず、高エネルギー加速器研究機構(KEK)は2月に文科省のロードマップの申請を行っていた。しかし、申請後に国際将来加速器委員会(ICFA)が新たに国際推進チームを設置することを決めたことで計画の進め方が一新されることが見込まれるとして、申請を取り下げた。国際推進チームは8月に設置され、準備研究所設置に向けた作業が始まっている。

 講演会はILC実現に向けた機運醸成を図るのが狙いで、新型コロナウイルス感染防止の観点からウェブ会議システム「Zoom」を活用して開かれた。講師は、高エネルギー物理学研究者会議高エネルギー委員長で東京大の森俊則教授、同大素粒子物理国際研究センターの山下了特任教授、東急総合研究所の藤井健顧問が務めた。

 森氏はILCの進捗(しんちょく)状況を示しながら「重要なのは米欧との意見交換を進めること」と強調。一方でKEKがロードマップの申請取り下げを公表していなかったことには「間違いだった。ILCに関係する地元の方々、サポートしてくれる産業界に公表してなかったことは、推進する研究者を代表して申し訳なく思う」と語った。

 山下氏は最新動向の重要なポイントとして、米国政府がILCへの支持を打ち出したことを紹介。タイムリーな実現へのマイルストーン(節目)は「新たな国際・国内推進体制で1年半の準備で世界の研究所が参加するILC準備研究所に移行すること」とし、巨額な財政負担にも触れながら「世界、日本にどういう意味があるのか、課題にどうやってチャレンジできるのか、よく考えるタイミングになっている」と述べた。

 藤井氏は「人類が共に手を携えて地球的課題に挑戦する場所」として「地球村」構想を挙げ、ILCはその一つの核となるとした。「ILCを誘致施設ではなく、地球プロジェクトとして捉える必要がある」としながら、コロナ禍による国際移動・国際共創の制約、国際社会の分断が起こる中で、ILCを新しい地球共創モデルと位置付け、世界に誇る知の拠点とするよう訴えた。

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