一関・平泉

往時の輝き再び 中尊寺金色堂 保存修理工事完了 15日に竣工式【平泉】

保存修理を終えた金色堂の外壁。中央部分を横切る大きな亀裂は、若干くぼんだ形のままに仕上げられた(中尊寺提供)
金色堂の外壁に生じた亀裂の修繕作業。周囲への影響を極力少なくするため、亀裂幅内のみで行われた(中尊寺提供)

 平泉町の中尊寺(奥山元照貫首)にある国宝・金色堂で6月から行われていた保存修理工事が完了し、15日には現地で竣工(しゅんこう)式が行われる。「昭和の大修理」から半世紀余りが経過し、外壁の一部に生じた亀裂のほか、漆や金箔(きんぱく)の剥落などを修復するため国庫補助事業により進められてきたもので、世界遺産登録から10年の節目の年を前に、往時に近い姿を取り戻した。

 同寺では1962年から7年間にわたり行われた解体修理から50年、また2024年に建立900年の節目を迎える金色堂の将来的な保存、修理の方針を打ち出すべく、文化庁の支援を受け18年に各分野の専門家ら5人による国宝中尊寺金色堂保存環境調査専門委員会(委員長・濵島正士公益財団法人文化財建造物保存技術協会顧問)を発足。建物の構造や保存環境に関わる大掛かりな修理は必要ないものの、漆箔の破損状況に即した最小限の補修が必要との結論に達し、19年に同委員で立ち上げた修理委員会での工事仕様の協議などを経て、20年6月に保存修理工事へと着手した。

 修理は外壁に生じた亀裂のほか、壁面と柱の接合部で発生した漆や金箔剥落の修繕を中心に実施。解体修理の際にも漆工事を担った小西美術工藝社(本社東京都港区)による作業では、漆と石材を砕いた粉末などを用いた「錆漆(さびうるし)」と呼ばれる下地を破損箇所に埋め、その上に漆を塗り重ねてから金箔を乗せて仕上げる工法を基本に進められた。

 このうち、南北両壁面に生じた大きな亀裂の修理では、周囲への影響を極力少なくするため亀裂の幅内のみで作業を実施。亀裂に沿って若干くぼんだ形のまま仕上げの状態を調整した。

 全ての工程を終えた11月には文化庁の担当官が訪れ工事の仕上がり状態を確認。工事期間中は拝観制限を行わず、拝観者に公開したまま作業が行われた。

 同寺は今回の工事について「金色堂は世界遺産平泉の中心となる建物であり、建造物と同時に美術工芸品、また極楽浄土を表現した宗教的空間など多くの側面を修理の方針に統合し、可能な限り満足できるものとすることを目標とした」としており、竣工式では奥山貫首を導師に一山の僧侶が工事の無事完了を祝う。

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