花巻

チーズを作らない理由はない 大迫チーズ加工生産組合(花巻市)

2019年に発売した「ワインチェダー」は、ほんのり赤ワイン風味を感じる大人のチーズ。もちろんワインも大迫産
ワインがあって、ブラウンスイスの牛乳があれば

 北上高地の最高峰・早池峰山の麓に位置する花巻市大迫町。傾斜地にブドウ畑が連なるブドウの産地で、ワイン造りが盛んな“ワインのまち”としても知られる。大迫チーズ加工生産組合は、この町で約30年前からチーズを作り続けている小さなチーズ工房。大迫のワインとチーズ、同じ産地だからこその最高のマリアージュを提案している。

 「早池峰醍醐」と名付けられた同組合のチーズは、イタリア料理でおなじみの「モッツァレラ」、紐状に裂ける「ストリング」、焼いてもおいしい「カチョカヴァロ」、お酒のお供にぴったりの「ペッパーチェダー」と大迫産ワインを入れた「ワインチェダー」、乳清から作る「リコッタ」の6種。どれも、原料乳を発酵させただけのナチュラルチーズの一種で、全て組合長の伊藤行雄さんが手作業で作っている。

おいしいチーズはいいミルクでなければ

 伊藤さんがチーズを作るのは週に2回。組合員の酪農家から生乳が到着するのに合わせて深夜から作業が始まる。200リットルの生乳を低温殺菌した後、乳酸菌とレンネット(酵素)を加えてカード(固まり)を作り、練りや成形などを経て約10時間後に作業が終了。使用する生乳はホルスタイン種と、県内でも珍しいブラウンスイス種の混合乳。脂肪分やたんぱく質含有量が多いブラウンスイス種の濃厚さが、早池峰醍醐には欠かせない。

 伊藤さんが初めてチーズを作ったのは、まだワインもチーズも一般的でなかった1970年代。大迫で「ワインがあるならチーズを作ってはどうか」という機運が高まり、地元の農業青年の一人としてチーズ作りを学ぶことになった。もともと料理が好きで好奇心旺盛な伊藤さんは、大学の先生に教えを求めたり書物を読んだりしてチーズ作りに熱中。90年に事業化して以来、ほぼ一人で製造に専念している。

 こだわり続けているのはただ一つ、「大迫の牛乳を使うこと」。「最初の頃は、規格に合わない2等乳を活用してチーズを作ってはどうか、なんて話もあったけれどそれは大間違い。いいミルクでなければ、いいチーズはできない」と力を込める。「ブラウンスイスの牛乳はチーズに最適。地元にワインがあって、ブラウンスイスがいたから、チーズを作らない理由はなかった」。

和食にも調和する普段の食べ物として毎日食べてほしい

 早池峰醍醐は、まろやかなミルク風味があってシンプルだけど味わい深く、和食にも調和するおいしさ。「どうやって食べたらいいか分からない」という人のため、伊藤さんは簡単な食べ方を提案している。「チーズは料理のバリエーションが豊富で栄養価も高い、すごい食品。もっと食べてほしい」と願う伊藤さん。自身も、モッツァレラをラーメンや鍋に入れる、裂いたストリングをのりで巻く、リコッタをキムチに混ぜる…など、チーズを普段の食卓にフル活用。地元に根付く早池峰醍醐はワインだけでなく、身近な岩手の食材とも“マリアージュ”する。

■大迫チーズ加工生産組合
花巻市大迫町内川目18-111-1 
0198・48・5078

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