奥州・金ケ崎

郷土の宝、保存・伝承 旧後藤正治郎家改修が完了【奥州】

耐震補強と改修工事が終了した県指定有形文化財の旧後藤正治郎家住宅

 奥州市教委が進めてきた県の有形文化財・旧後藤正治郎家住宅(同市前沢生母字天王)の耐震補強と改修工事が完了し、29日に現地で近隣住民に向けた完成記念式が行われた。市教委は、改修とそれに伴う調査で推定建築年代を19世紀前半と修正したことなどを説明。住民らと郷土の宝の伝承、保存に向け気持ちを新たにした。

 同住宅は、仙台藩領に特徴的な直家(すごや)の古式を残す古民家。国重要文化財の旧後藤家(同市江刺)などに次ぐ価値を持つという。前沢町時代の1985年に県有形文化財に指定され、現在は建物、敷地とも市が所有している。

 創建以来4度目となる今回の修理以前は、茅葺(かやぶ)き屋根が経年劣化。東日本大震災では基礎の損傷に伴う建物の歪みや土壁の剥落などの被害を受けた。市は2019、20年度の2カ年で耐震補強・改修工事を実施し、1月末に竣工(しゅんこう)した。工事費は9977万円で、対象経費の半額に県文化財保護事業補助金を充当した。

 調査では同住宅の下から前身の建物のいろりと推定される石組が発見され、部材も転用が多かったことが判明。加工の痕跡や全国的な大工道具の変遷と比較し、創建時期をこれまでの推定より100年ほど新しい19世紀前半に修正した。

 改修は、最初の修理後で特徴的な生活の痕跡が色濃い江戸時代末期から明治20年前後までの状態に復元することを主眼に実施。座敷を含む各室に備えたいろりや、風呂場(湯浴み場)などの珍しい遺構を見ることができる。

 記念式で髙橋勝市教育長は「(旧後藤正治郎家住宅を)郷土の宝として愛し、末永く活用してほしい」とあいさつ。施工業者や住民代表らと共にテープカットをした。来場者は住宅内を早速見学。「もたい元気の会」によるアトラクションも行われ、この日に合わせて新調した衣装で「母禮(もらい)太鼓」を披露した。

 市に申し込むことで、屋内の見学や公共施設としての活用が可能。これまでも地元の老人クラブなどが活用してきたといい、千田敏彦生母地区振興会長(74)は「使用しなければ建物は傷んでいく。極力使うようにして伝承していきたい」と話していた。

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