北上・西和賀

軍事郵便 良好保存へ 専用書庫で酸化、変色抑制 平和記念展示館リニューアル【北上】

北上平和記念展示館でリニューアルされた資料室。貴重な軍事郵便などが良好な状態で保存できる環境が整った

 北上市和賀町藤根の北上平和記念展示館(髙橋洋明館長)は、資料の保存環境向上へ施設のリニューアルを行った。専用の資料室(書庫)を設け、戦禍を伝える貴重な軍事郵便などを良好な状態で保存していく。

 同館では、日中戦争から太平洋戦争までに出征した農村出身兵士から、地域の教育者・髙橋峯次郎さん(1883~1967年)らへ宛てた7000通以上の軍事郵便、戦時中の資料を保存、展示している。ただ、戦後75年余りが経過し、軍事郵便や資料の劣化が懸念され、保存が大きな課題だった。

 市は地元の事業所経営者から寄付された1000万円を含めた約2000万円を投じ、2020年度に資料保存等整備事業に着手。休館中の冬場に館内で工事に当たり、もともと防火防水、耐震性に優れたボイラー室を資料室に改修した。

 資料室内は一定の温湿度で管理し、ハンドル式の移動書棚を設置。調湿・ガス吸着シートを書棚の仕切り板などに張り付け、軍事郵便をはじめ貴重な紙資料の酸化や変色を抑える。限られた空間で高い収納量と省スペースを両立し、執筆者別にファイリング整理した。

 中性紙の保管箱、保存袋も確保。戦時中、使用されたカバンや靴、ベルト、水筒、ラッパなどを入れ、資料を傷める光やちり、酸性の環境から守る。今後、作業ボランティアで本格的に整理する。

 展示室の照明を発光ダイオード(LED)とし、来館者が見やすいように改良。玄関には下屋を設置し、雨でも入りやすいよう配慮した。

 館内は一見、大きな変化がないように見えるが、同館を管理、運営する藤根自治振興会の池田隆志専務理事は「資料の保存、劣化防止に特化したリニューアル。これで原本を長く非常にいい状態で保存でき、後世に残す手立てをしていただいた」と強調。髙橋館長は「課題だった資料保存は一歩も二歩も前進した。ボランティアの学芸員は高齢化しているが、小中学生も校外学習で来てくれるだけに、資料を保存活用し後世に伝えていきたい」と話している。

 同館は原則月、火曜日休館(祝日は開館)。午前10時~午後4時。入館無料。問い合わせは同館=0197(73)5876=。

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