北上・西和賀

リンゴ畑 下草残し害虫防除 天敵を保護 発生抑制実証 県農研センター【北上】

県農業研究センターのリンゴ圃場。園路左側は通常刈り(約2センチ)、右側は刈り残し(8センチ程度)、右側はハダニ類発生抑制に大きな効果が見られた=2020年5月、北上市成田、同センター提供
減農薬安定生産に期待

 北上市成田の県農業研究センターは、リンゴ畑の下草を一定程度刈り残すことで、リンゴの重要害虫・ハダニ類の防除に役立つことを実証した。下草にすむ天敵・カブリダニ類を保護し、農薬を減らしながらハダニ類の発生を抑制。農薬に依存しない防除技術として農家の安定生産、所得向上に寄与するものと期待される。

 ハダニ類にリンゴの葉を吸われると葉裏が赤みがかって光合成の力が弱まり、果実の色合いや味などの品質、翌年の花芽にも悪影響を及ぼす。リンゴ農家は年に数回、防除を余儀なくされるが農薬は比較的高価な上、農薬への耐性も付きやすく、大きな負担となっていた。

 通常はリンゴ圃場(ほじょう)で園路周辺の下草は高さ2センチ程度まで刈るが、8センチ程度に高刈りすることで土着している天敵のカブリダニ類を保護。秋田県の成功事例を基に本県でも独自に取り組む農家もあり、同センターは2018年度から国の研究機関と連携し研究を開始。二戸市から一関市までの南北の計11圃場、北上市の同センターの圃場で実態調査を進めた。

 その結果、従来通り2センチ程度に刈り込んだ圃場ではカブリダニ類が増えず、ハダニ類が増殖。農薬(ダニ専用殺虫剤)散布後は落ち着いたが、ハダニ類はリバウンドして増えた。一方、高刈りした圃場でカブリダニ類にやさしい殺虫剤を使用したところ、ハダニ類が増加してもカブリダニ類も増え、ダニ専用殺虫剤を散布せずにハダニ類が減少した。

 下草を高刈りすることでカブリダニ類が増えてハダニ類の増殖を防ぎ、ハダニ類が樹上に及ぶことも軽減される。8月以降に明確な効果が現れ、リンゴの果実生育、翌年の花芽に特段の影響はなかった。

 ただ雑草が伸びるとリンゴの木へ十分に水分が回らず、湿気などで生育への悪影響となるだけに、同センターは「草刈りはしっかりやっていただいた上で、少し高めに刈り残してもらえれば」と啓発。枝や果実に寄生する「リンゴワタムシ」が発生した事例もあり、カブリダニ類に影響の少ない農薬の散布を呼び掛ける。

 同センター病理昆虫研究室の加藤真城上席専門研究員は「農家が取り組んできた先駆的取り組みで、高い効果が裏付けられた」と成果を強調。「農家に下草の高刈りとカブリダニ類に優しい農薬を使用いただき、コスト削減、安定収量確保につながれば」と話している。

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