花巻

被害者、加害者ならないで 輪禍犠牲の遺族講演 湯本中【花巻】

湯本中の生徒に交通事故の悲惨さ、命の尊さについて語り掛ける大崎さん

 県警の「いのちの尊さ・大切さ教室」は28日、花巻市の湯本中学校(菅原正浩校長、生徒125人)で開かれた。交通事故で当時7歳の長女を亡くした二戸市の大崎礼子さん(58)が講師となり、全校生徒に「被害者にも、加害者にもならず、一日一日を大切に生きてほしい」と呼び掛けた。

 2000年11月、集団登校中の小学生が飲酒運転の軽トラックにはねられ、児童2人が死亡し、6人が重軽傷を負った。この事故で大崎さんの長女涼香さんが亡くなった。

 大崎さんは「飲酒運転は何の落ち度もない尊い命を奪ってしまう。なぜ飲酒運転がなくならないのか。悔しさ、悲しみ、怒りなどいろんな感情が今も湧いてくる」と当時のことを話し始め、「娘は7年と6カ月の短い命で、思い出も少ししかない。その思い出も長い年月がたつにつれ、少しずつ消えていくのが自分でも分かる。それがとても悲しい気持ちになる。みんなから忘れられていくことも家族にとってはつらいこと」と、時の残酷さについて触れた。

 当日の朝について、大崎さんは「『行ってきます』『いってらっしゃい。気を付けてね』といつものあいさつを交わした。空には白鳥が飛んでいるのが見え、子供たちははしゃいでいた」と振り返った。

 事故現場の様子や、変形した赤いランドセルの写真を映し出しながら「集団登校の列の中には、2人の兄もいた。目の前で妹が動かなくなっていく様子を見た。『僕が手を引っ張ってあげれば』などとずっと後悔していた。翌年のクリスマスの日、子供は『もし、本当にサンタクロースがいるのなら、プレゼントに涼香を連れて来てほしい。あとは何もいらないから』と話していた」などと、家族が苦しみ続けた日々を切々と語った。

 大崎さんは「涼香の未来や夢や可能性を、あの日に一瞬で奪われた。その悔しさは計り知れない。私たちも被害者遺族という言葉を一生背負うことになった。このような悲劇を繰り返さないために語り続けることが涼香の思いでもある」と述べ、「誰にとっても命は尊いもの。大切に生きてほしい」と生徒たちに呼び掛けた。

 県、県教委、いわて被害者支援センターの共催による同教室は、犯罪被害者支援の啓発と次代を担う青少年の心の育成などを目的に、09年から小中学校や高校などで実施している。

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