奥州・金ケ崎

自身救った農業へ恩返し ヤンマー学生作文 千田さん(県立農業大学校2年)金賞【金ケ崎】

ヤンマー学生懸賞論文・作文の作文の部で金賞に輝いた千田さん

 金ケ崎町の県立農業大学校(菊池徹哉校長、学生95人)の農産園芸学科果樹経営科2年千田朋実さん(22)=一関市舞川字小塚出身=は、第32回ヤンマー学生懸賞論文・作文の作文の部で最高賞の金賞に輝いた。タイトルは「農業に恩返し」。回り道を経て選んだ農業と学びへの思いを真摯(しんし)に振り返った。卒業を控えた千田さんは「これからは学びたい思いに加え、恩を返していく」と進路への希望を新たにしている。

 ヤンマーアグリ(本社岡山市)が主催し、「“農業”を“食農産業”に発展させる」をテーマに募集。2021年度は、作文の部に全国の農業大学校や農業短大に在籍する30歳以下の学生から478点の応募があった。審査の結果、金賞1点、銀賞2点などを選出。県立農業大学校からの金賞は、初受賞の前回に続き2年連続となった。

 作文によると、千田さんは高校時代に医療の道を志したが、辛い出来事が重なり学校に行けなくなった。教諭らのサポートで何とか看護学校に入学するも、看護よりも病気や生命現象への興味が大きいことに気付き、高校時代の体調不良も後を引いて再度休みがちになった。

 千田さんを救ったのは、奥州市衣川に住む農家の叔母。連れ出された農作業で心の安らぎを取り戻していく。医療以外の道として同大学校を初めて知り、悩んだ末に入学を決めた。

 「恵まれた環境で思いの限り学べた」と述べ、果樹栽培の興味深さ、安定生産の難しさに触れ、病害虫防除や優良品種開発の重要性を実感。技術開発のため、岩手大農学部への編入学に進路を取った。

 自身を救った農業への恩返しに掲げた夢は二つで、一つは食糧生産への植物病理学からの貢献。もう一つは、農福連携の現場で可能性に気付いたという、仕事としての農業を社会とのつながりが弱い人へ届けること。「遠回りした経験は私の財産。この経験を糧に農業の道を邁進(まいしん)していく」と力強い言葉で結んでいる。

 講評では「仕事や進路を真剣に考え抜いて行動したことがリアルに伝わる」「自分の夢に向かう経緯が大変素直に書かれている」など、高い評価を受けた。

 1月にオンラインで入賞が発表された。千田さんは「頂いていいのかと今でも思う」と驚きながらも、「叔母に伝えたらとても喜んでくれた。当時時間を割いてくれた高校の恩師や、大学校の先生方にも感謝を伝えたい」と感激している。

 担任の浅川知則同経営科主査講師は「千田さんは一言でいうと努力家。普通高校の出身ながら、驚異的な早さで知識・技術を身に着けた。実践力を生かして研究に励んでほしい」と背中を押した。

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