奥州・金ケ崎

奥羽仕置時 変化に焦点 えさし郷土文化館テーマ展【奥州】

奥羽仕置の胆江地方への影響を紹介しているえさし郷土文化館のテーマ展。展示の木像は北限の伊達政宗像とされる

 奥州市のえさし郷土文化館と市教委が主催するテーマ展「サイカチの木は残った 奥羽仕置と胆江地方」は5日、同市江刺岩谷堂字小名丸の同館で始まった。安土桃山時代に豊臣秀吉が東北を政権下に組み込んだ1590(天正18)年の奥羽仕置と翌91(同19)年の再仕置により、江刺近辺に生じた大きな変化を紹介。市内から集まった資料を通し、伊達氏の台頭基盤の形成や、没落しながらも当地に名残を伝える葛西氏などにスポットを当てている。3月27日まで。

 奥羽再仕置430周年記念プロジェクトとして、東北、北関東と新潟県の博物館など13施設が連携した2021年度の展示の一環。収蔵品のほか、市内の文化財・教育施設などから借り受けた38点を並べている。

 奥羽仕置は、秀吉が天下統一の過程で東北に対して取った諸大名への処分や諸政策など。現地の反発は翌年の再仕置を招いた。秀吉への帰順・反発に応じて各大名、家臣は領地の再配置・没収などを受けた。勢力図は大きく書き換わり、後の藩政時代につながっていく。

 新勢力として当地に入った武将のうち、福島県がルーツの岩城氏の流れをくむ一族は後の岩谷堂伊達氏となり、岩谷堂城を治めた。展示されている「岩城親隆書状」は、領地替え以前の来歴をうかがわせる戦国時代の古文書。旧領から持ち込まれたとみられる。

 目を引く「木造伊達政宗坐像」は江戸時代の作で、仙台藩伊達氏の分家・小梁川氏が野手崎(現在の同市江刺梁川)に奉っていた。現地は伊達領の北限。領地の概形が整ったのも奥羽仕置がきっかけといえる。

 一方、胆江地方にも基盤を持った葛西氏は、反秀吉の一揆に加わった。鎮圧され伊達氏に取って代わられはしたが、農民となって土地を持つなどして地場の権益を維持した家臣もいた。テーマ展のタイトルは、再興を願って旧臣が「再勝つ」「葛西勝つ」としてサイカチを植えたという伝承から取った。江刺の菅生院に伝わる位牌は、後代に葛西氏を追善供養した物と考えられるという。

 同館の野坂晃平学芸員は「市内だけでも当時に関連した資料がこれだけ集まるのは、一連の仕置が後々まで尾を引き、郷土史上でも大きな転換点だったためといえる」と解説している。

 同館では新型コロナウイルス感染拡大を受け、インターネットを通じて展示に親しめる企画を検討している。

 入館料は一般300円など。会期中無休で、時間は午前9時~午後4時。3月からは5時閉館となる。

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