北上・西和賀

復興へ流した汗と涙 土木セ、農村整備セ職員の経験談紹介 合庁で東日本大震災記録展【北上】

北上地区合同庁舎で開かれている「東日本大震災における復興記録展」

 県南広域振興局の北上土木センターと北上農村整備センターによる「東日本大震災における復興記録展」は、北上市芳町の北上地区合同庁舎1階県民ホールで開かれている。発災時の様子やその後の災害対応にどのように取り組んだかを、両センターの職員が振り返っているほか、県の復旧・復興事業、沿岸被災地の復興の歩みなどを写真とパネルで紹介している。3月18日まで。

 同展は、震災の記憶や経験を後世に伝承しようと企画。震災から10年の節目に当たる2021年には北上土木センター5人の経験談をパネルで紹介したが、今回は同センター4人、北上農村整備センター3人の合わせて7人がそれぞれの経験を振り返っている。

 当時、沿岸広域振興局土木部に勤務していた守谷康道路環境課長は、工事完了検査のため大槌町で検測を始めようとした時に地震に遭遇。「直感で津波が来ると判断し、即座に帰庁。国道45号から高所を通る県道へ進路変更。釜石湾を見ると、湾口防波堤を越えて津波が来ていた。大きな揺れはひっきりなしに続いている」と、当日の様子を赤裸々につづっている。

 3日目からは、緊急車両が通行できるよう最低限のがれき処理などを行う道路の啓開作業に奔走し、6日目には「もう普通のCMしてるし…今の状況わかってるんか!って感じ」と率直な思いを記している。

 大船渡で農地復旧業務に携わった北上農村整備センター職員は、農家の意向などを聞いた地元説明会で「何もする気がないから復旧しなくていい」「生活再建が第一で営農再開まで考えられない」といった声があったことを紹介。「いつか営農を再開したいときが来る日のために、農地を復旧しておきませんかと、寄り添う気持ちを心掛けた」「表土に適した土を求めて県内を探し回った」と、困難を極めた仕事を振り返っている。

 同展ではこの他、被害状況や11年間の復興の歩みを記した「県土づくりNEWS」、土木部、農林水産部の沿岸管内復興事業、県建設業協会の提供資料などを展示。復興道路や水門・陸閘(りっこう)自動閉鎖システムなどを紹介する動画も上映している。展示内容を詳しく知りたい場合は、平日に限り両センター職員が震災語り部となって当時の様子などを説明する。

 訪れた市民は、資料を一枚一枚じっくり読みながら「当時を思い出して胸が痛くなった」「若い人にしっかり語り継がなければ」と話し、災害の脅威や備えの大切さを感じ取っていた。

 時間は午前9時~午後4時。土日・祝日も見学できる。入場無料。問い合わせは北上土木センター=0197(65)2738=まで。

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