一関・平泉

外壁落下 道路陥没 福島沖地震 市内各地に爪痕【一関】

北側の壁面が2階部分から崩れ落ちた中里市民センター=17日午前10時30分、一関市山目町

 16日深夜、福島県沖を震源に発生した地震で震度5強の強い揺れに見舞われた一関地方は、一関市を中心に民家や公共施設などの建物が大きな被害を受けたほか、水道や電気といったライフラインも止まり、市民生活に大きな影響が出た。

 市消防本部が17日午後4時現在でまとめた被害状況によると、人的被害は大東町曽慶の女性(71)が屋外に避難する際、玄関で転倒し右手指を脱臼。磐井町では男性(84)が倒れてきた棚が頭部に接触し負傷した。山目では女性(57)が食器棚に挟まれて動けなくなり消防隊に救出された。

 停電は一関・花泉両地域で最大1807戸に達したが、午前4時ごろまでに復旧。山目字館地内では道路に亀裂や陥没が生じ56世帯が断水した。市では復旧工事と併せて午前5時30分から給水車を配置し対応に当たり、祖母の千田美代子さんと給水に訪れた芽依那さん(山目小学校5年)は「当たり前のものがないと普通の暮らしができないことが分かった」と語った。

 公共施設の被害は、学校や市民センター、老人福祉施設など53施設。大手町の一関図書館では閉架書庫を含め約9000冊が棚から落下したため臨時休館し、地震直後から駆け付けた職員が片付けに追われた。黒川俊之館長は「建物に大きな被害はなく、18日は通常開館する」としている。

 山目町の中里市民センターは北側の壁面が2階部分から崩落したほか、内部も大きな被害を受けた。中里秀孝所長は「ホールは天井の空調機器が落下するなど危険な状況で、当面は利用できない」と肩を落とす。同センターがある中里地区では多くの店舗や住宅も被害を受け、市道は同地区を含め一時最大6路線で通行止めの措置が取られた。

 市街地中心部に位置する、磐井町の一関シネプラザは屋外の変電施設が損傷し停電。天井が一部落下するなど東日本大震災を上回る被害を受けた。停電は建物内の別店舗からの電気で対処しているが、被害の全容はまだ不明。復旧には最低1カ月は見込まれ、村上真次マネジャーは「子供たちが春休みに入る中このようなことになり残念。5月の大型連休までには復旧させたい」としている。

 田村町の世嬉の一酒造では博物館やレストランとして利用する蔵の一部が被害を受けたほか、店内に陳列していた酒瓶40~50本が落下して割れた。佐藤航代表取締役社長は「醸造施設に被害はなくレストランも営業できるが、今後観光シーズンを迎える中で新幹線が止まった影響は大きい」と語る。

 被害は同市東部の観光施設にも及び、東山町長坂にある日本百景の名勝・猊鼻(げいび)渓に近いげいびレストハウスは建物の屋根裏にある貯水タンクの継ぎ目が外れた影響で水を吸った天井が落下した。佐々木賢治会長は「東日本大震災でも同じ被害があり、耐えられるよう直したつもりだったが」と再度の被害に困惑。営業は通常通り継続している。

 千厩町千厩にある千厩酒のくら交流施設でも東蔵などで外壁の一部が崩落。近所に住む男性は「まだ寝ていなかったが、大きな地震で11年前と同じようになるのではと怖かった。今回は夜だったので、余計に恐怖を感じた」と振り返った。

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