奥州・金ケ崎

旧安倍家住宅主屋など5件 登録有形文化財に 文化審答申 歴史的景観を形成【奥州】

旧安倍家住宅主屋(奥州市教委提供)
旧安倍家表門(奥州市教委提供)

 文部科学大臣の諮問機関文化審議会(佐藤信会長)は18日、奥州市水沢字日高小路にある「旧安倍家住宅主屋」など旧安倍家に関係する5件の建造物を登録有形文化財(建造物)に登録するよう答申した。同市内ではこれまでに旧緯度観測所本館など8件が登録されている。新たに加わる5件は主屋、板蔵、土蔵、表門、庭門。市教委では貴重な財産を守り続け、今後の公開活用について進めたいとしている。

 旧安倍家住宅の5件は、明治前期から大正後期の建設。このうち明治前期に建てられ、大正後期に増築された主屋は、水沢城下の武家町の近代和風住宅。2階建て寄せ棟造りの玄関棟の西に平屋建て入母屋造りの座敷棟を配し、玄関から北西に座敷をL字に並べ、北東の庭に面して緑を巡らせている。玄関上部の2階は傘天井の座敷で、数寄屋風の技巧が凝らされている。

 板蔵は明治前期の建設。主屋の北東に位置し、平屋建て切り妻造り鉄板ぶき。通りに面して地域の歴史的景観を形成している。土蔵は明治後期に建設された土蔵造り2階建て。切り妻造り鉄板ぶきの置き屋根形式で、外壁はなまこ壁。北妻に家紋を掲げ、鏝絵(こてえ)で破風尻に絵様を描いて意匠を凝らしている。

 表門は大正後期建設。寄せ棟鉄板ぶきで、本柱上に冠木(かぶき)を渡し、上部は軒周りを全てしっくい塗りという独特な意匠。戸口に両開きの板戸をつり、東脇に潜り戸を設けている。武家の屋敷構えを伝え、城下の景観を形成している。

 庭門も大正後期の建設で、主屋北に広がる庭園の東辺に開く腕木門。切り妻造り板ぶきで、本柱上に冠木を渡している。冠木上部は透かし彫りの欄間を入れて整えている。庭園東辺を区画し、簡素な造りながらも水沢城下武家屋敷の後世を伝える庭門となっている。

 旧安倍家住宅の5件は登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」「造形の規範となっているもの」に該当。同審議会では「技巧を凝らした2階座敷など数寄屋風の意匠を施し、見所が多い。屋敷は表門を通りに面して構え、北国特有の板蔵や土蔵を配するなど、建物と相まって近世武家住宅の系譜を見て取れる」と評価している。

 市教委の髙橋勝教育長は「主屋は部分的に改築が施されているが、当時の姿をほぼ今に残している。これからも貴重な財産を守り続けていくほか、今後なお一層公開活用について進めていく。地域には、郷土の宝として末永く慈しんでもらいたい」と話している。

 本県の登録有形文化財(建造物)は、今回の5件を含めて100件となる。

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