北上・西和賀

東和の日本酒復活 賢治ゆかりのコメ使用 「百姓おどり」販売開始 喜久盛酒造【北上】

小田農園で、復活した「百姓おどり」を手にする藤村社長(中央)と小田さん(右)、川口さん

 北上市更木の喜久盛酒造(藤村卓也代表取締役社長)は、2015年から生産が途絶えていた花巻市東和町の日本酒「百姓おどり」を復活させた。同町産で、宮沢賢治ゆかりの水稲品種「陸羽132号」を原料に使用し、コメのうま味がしっかりとした酒に仕上がった。3月から、四合瓶(720ミリリットル入り1980円)と一升瓶(1・8リットル入り3960円)で販売を開始。「銘柄に合う、地域性が表現された酒造りがしたかった」という藤村社長(49)のこだわりが詰まっている。

 「百姓おどり」は、藤村社長の祖父が1985年ごろに立ち上げた銘柄で、カップ酒として愛されてきた。同町の郷土芸能である「百姓踊り」を名に持つ酒だが、北上産のコメを原料としていた。「東和で作ったコメで『百姓おどり』を造るべきだ」との藤村社長の強い思いから、2015年に製造を休止。商標登録は更新し続けた。

 その後、アイガモ農法(無農薬・無肥料)で同品種を栽培する同町南川目の小田農園と出合った。同農園を手伝っていた元花巻市地域おこし協力隊川口摩弓さん(46)を介してつながり、復活に向け、21年4月から同農園で米作りに取り組んだ。同農園の小田肇さん(76)と共に、自身で種まきから稲の収穫まで実践。11月ごろから酒造りを始め、今年1月に完成した。

 復活した「百姓おどり」は、日本酒の古来の製法「山廃(やまはい)仕込み」で醸造した純米酒。精米歩合80パーセントで、どっしりとした味わいが特徴。アルコール度数は18度と、高めに仕上げた。温めて飲むと、よりうま味が膨らむという。

 同品種は、賢治が栽培を推奨したコメともいわれ、藤村社長は「花巻のコメといえば『陸羽132号』だと思った。気に入っている銘柄なので、こだわりを込めて造った」とアピール。試飲したという小田さんは「お酒が出来上がり、うれしい。甘みが感じられる。喜久盛の味だ」と顔をほころばせる。

 2人をつないだ川口さんは「東和の人たちが喜んでいる。復活してくれてうれしい」と喜ぶ。

 四合瓶は1100本、一升瓶は350本製造。花巻市の猿舘酒店、わかば酒店で取り扱っているほか、一関市千厩町の高橋酒店では通信販売もしている。問い合わせは喜久盛酒造=0197(66)2625=へ。

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