北上・西和賀

開花メカニズムを解明 細胞の「水門」機能関係 開閉制御技術開発に期待 岩手生工研 リンドウ【北上】

花が閉じた状態のリンドウ
高温でさらに光の刺激が加わると大きく開く

 北上市成田の岩手生物工学研究センター(小岩一幸理事長)の根本圭一郎主任研究員(40)らの研究グループは京都大、名古屋大との共同研究で、リンドウの花が開くメカニズムを解明した。花が開く運動は細胞の「水門」としての役割を果たしているアクアポリンの働きによることが判明。同センターによると世界初の解明といい、今後リンドウの開閉を制御する技術開発が期待される。

 チューリップやタンポポなど多くの花は、温度や光に反応して開閉を繰り返すが、詳しい仕組みは分かっていなかった。同グループは、昼夜の気温変化で何度も開閉するリンドウの特性に注目した。

 同センターに隣接する県農業研究センターで育成された新品種リンドウを使用し、日本学術振興会の助成を受けて2018年度から研究を開始。その結果、花が開く運動はアクアポリンによる水の取り込みと細胞体積の増加によって生じ、それには温度と光の刺激が必要と分かった。

 実験では気温16度のリンドウは閉じたままだが、22度になると高温に刺激されアクアポリンの働きで細胞内に水が流入し、細胞体積は緩やかに増加し花が開き始める。これに日差しが強まるとアクアポリンが光に応答してリン酸化、活性化し細胞内への急速な水流入、細胞体積増加が誘発され、花はさらに開く。

 アクアポリンは、生物が生きていく上で不可欠なタンパク質の一つで細胞内外の水の通り道(水門)として機能することは知られていたが、花の開閉に関わっていたかは不明だった。今回は花が開くメカニズムに加え、アクアポリンの働きを調節する酵素の存在も初めて解明。水の力を利用し、花が開く仕組みの一端が分かった。

 研究グループは当初から開閉のメカニズム解明に努めたが今回明らかになったのは「開」で、「閉」はまだ分かっていない。リンドウは花が開くのに時間を要する一方、閉じるスピードは圧倒的に速く、根本主任研究員は「開くとはまた違った別のメカニズムがあるのでは」とみている。

 今回の研究成果は、植物科学分野で世界的権威のあるトップジャーナルの国際学術雑誌「The Plant Cell」にオンライン公開され、米国やフランスなど各国の研究者から問い合わせが寄せられるなど注目を集めている。

 本県はリンドウ生産量日本一を誇り、特に贈答用、観賞用で花が開いているリンドウの市場ニーズは高い。今後は、開閉を制御する技術開発に期待が寄せられている。

 根本主任研究員は「今回の成果が、他の花や園芸作物でも花が開くメカニズム解明のきっかけになれば」と語る。研究グループは花が開くメカニズムが他の園芸作物で機能しているか、さらに「閉じる」メカニズムについても追究していく。

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