花巻

直筆の草稿 初公開 童話「ツェねずみ」特別展 宮沢賢治記念館【花巻】

特別展前半で公開された賢治の童話「ツェねずみ」の草稿

 花巻市矢沢の宮沢賢治記念館で、宮沢賢治(1896~1933年)の童話「ツェねずみ」の世界を紹介する特別展が開かれている。賢治直筆の草稿も2期に分けて初めて公開する。

 賢治の作品の中で「ツェねずみ」を含め、ネズミを中心とした作品は三つある。どれも動物の世界を借りて人間の愚かな部分を風刺した物語だ。

 主人公の「ツェ」は、うまくいかないことがあると、相手のせいにして責め立てるため、次第に友達がいなくなる。道具たちとも交流し、最後にはネズミ捕りだけが仲良くしてくれるが、相変わらずな態度で怒らせ、ネズミ捕りに閉じ込められてしまう。

 特別展では同館職員が手掛けたイラストと共に、作品の登場人物、ストーリー、作品が書かれた時代背景などを紹介するほか、このほど脱酸性化処理や修復作業を終えた全14枚の草稿を2期に分けて初めて公開する。

 今月22日までは、21(大正10)年ごろに執筆された草稿のうち前半の7枚が展示された。原稿用紙にブラックブルーのインクでしたためられ、清書した後に推敲(すいこう)し表現を練り直した跡が確認できる。同館学芸員の宮澤明裕上席主査は「賢治が当初どういったことを考えていたのかを見ながら読むと、また違った世界が見えてくる」と話す。

 作品が執筆された当時の新聞や雑誌裏にはネズミ捕りの広告が取り上げられている。宮澤上席主査は「ツェねずみが書かれたのは賢治が東京にいた頃で、世の中に対してのアンテナが研ぎ澄まされていた時代。多くの情報が得られる環境で、ネズミ捕りの広告から着想を得たのではないか」と推測する。

 特別展は7月18日まで。草稿の後半の公開は7月9~18日。

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