一関・平泉

酒蔵復活へ再始動 10月にも仕込み開始 世嬉の一「きれいな日本酒を」【一関】

酒蔵復活に向け準備が進む中、設置されたタンクを前にする航社長(左)と晄僖相談役

 酒造・販売の世嬉の一酒造(本社一関市田村町、佐藤航代表取締役社長)は、40年ぶりの酒蔵復活に向けて再び動き始めた。東日本大震災で傷んだ蔵の改修を終えて2020年に単独での酒造を目指したが、新型コロナウイルスの影響でストップしていた。コロナ禍はまだ続いているものの、再起を期して日本酒製造に乗りだすこととし、工事が進む。10月の醸造開始を見込み、海外への輸出も視野に入れており、社長の父で先代社長の晄僖相談役との親子2代にわたる酒蔵復活の悲願達成を目指す。

 同社は1918(大正7)年に創業。本物志向の酒造りを展開していたが、82年に当時の社長が急逝して倒産寸前に追い込まれたため、やむなく別の酒造会社のタンクを借りて共同醸造の形で酒造を継続した。95年にいわて蔵ビールを設立し、順調に経営状態が回復。酒蔵復活も計画していたが、2008年の岩手・宮城内陸地震、11年の東日本大震災で蔵が被災したことで延期に。19年4月に復旧作業を終えて本格復活に取り掛かったが、今度はコロナ禍で経営が厳しさを増し、再び持ち越された。

 一時は断念も頭をよぎったが、「体力があるうちに新しい事業を」と再度酒蔵復活を目指すことに。タンクの搬入を終え、5月から配管工事が本格化し、今月末までに終える予定。順調にいけば10月に仕込みを開始し、11月の商品発売を見込む。

 ビール製造のノウハウを生かし、タンクには温度管理ができる仕組みを採用。一般的には冬だけの醸造が年中できるようになるという。仕込み回数が多くなるため、さまざまな種類を造ることができ、需要に合わせて新商品を売り出す。海外・贈答用と地元用の2ブランドを提供する予定で、現在はロゴのデザインを考案中。県工業技術センターから助言を受けながら商品開発を進めており、航社長は「奇をてらわないきれいな酒を目指す」と語る。

 酒蔵復活は晄僖相談役にとっても悲願で「自分の代で共同醸造に変えたが、自分の場所でまたできるようになって感無量。第一線を離れて気楽な身だが、どんな酒ができるのか今から楽しみ」と笑顔を見せる。

 航社長は40年ぶりの酒蔵復活に向け「正直不安の方が大きいが、やるしかないという気持ち。これからの10年、日本酒部門を伸ばして地酒復活を目指したい」と意気込んでいる。

来月20日までクラウドファンディング
▲世嬉の一酒造のCFのQRコード

 世嬉の一酒造は、酒蔵復活に向けてクラウドファンディング(CF)を実施している。顧客とのつながりをつくり、仲間となってもらうための取り組み。6月24日に開始したところ、スタートから8時間で目標の100万円に達したが、さらに仲間を増やす意味から継続し、8月20日まで受け付ける。

 URLは https://camp-fire.jp/projects/view/584549 

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