一関・平泉

柳之御所遺跡のみ 拡張登録 構成資産 検討委 平泉の文化遺産

柳之御所遺跡のみを対象資産として世界遺産「平泉の文化遺産」の拡張登録を目指す方向性が示された検討委=18日、東京都港区

 【東京・千葉健一】第19回「平泉の文化遺産」世界遺産拡張登録検討委員会(委員長・清水真一徳島文理大文学部教授)は18日、東京都内で開かれ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)による世界文化遺産への拡張登録を目指す構成資産を柳之御所遺跡(平泉町)のみとする方向で意見をまとめた。今後は、県が同検討委の意見を踏まえた上で拡張登録を目指して協議を進めてきた資産を有する関係市町と調整を図りながら、2022年度内をめどに同遺跡の顕著な普遍的価値(OUV)を証明する推薦書案作成など、登録実現に向けた準備を進めていく。

 委員全6人をはじめ文化庁や県、一関市、奥州市、平泉町の各担当者がオンラインを含み出席。前々回から協議してきた拡張登録を目指す構成資産を柳之御所遺跡のみとする案と、同遺跡と骨寺村荘園遺跡(一関市)とする案について、OUVを立証する手段を含めた意見を交わした。

 このうち奥州藤原氏の政治、行政上の拠点とされる柳之御所遺跡については、委員の間から「近年の発掘調査で見つかった中尊寺方面へ続く道路跡などは、登録された構成資産との関連性を追加で示す材料になる」などの意見があった。

 一方、骨寺村荘園遺跡については、仏国土(浄土)を表す造形として位置付ける点で「浄土という考えに幅を持たせる意味ではユニークでシンボリックになる」との声があった一方、「文化的景観として重要な価値はあるが、登録された5資産と考えるスタンスが違う」「当時の庶民が浄土をどう理解しているのかを証明するのは難しい」などの意見があった。

 一関市教委の小菅正晴教育長も「骨寺を含めることで、平泉の価値をより大きな視点で高めることができる」と意見したが、まとめとして清水委員長は「骨寺村荘園遺跡の価値や重要性は認めるが、浄土という視点で推薦書を作成するには時間がかかることが見込まれる。今回拡張登録を目指す資産とならないことは、価値が低いことを示すものではない」と述べた。

 拡張登録に向けては、11年に中尊寺や毛越寺をはじめとする構成5資産が「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」として世界文化遺産に登録後、構成資産を絞り込んだ際に除外された柳之御所遺跡と達谷窟(たっこくのいわや)(平泉町)、骨寺村荘園遺跡、白鳥舘遺跡と長者ケ原廃寺跡(以上奥州市)の登録を目指して同検討委で協議が進められてきた。

 骨寺村荘園遺跡は、中尊寺に伝わる国指定重要文化財「陸奥国骨寺村絵図」に描かれた当時の景観がそのまま残されており、地元一関市厳美町でも地元住民が主体となり価値を伝える取り組みを続けている。

 本寺地区地域づくり推進協議会の五十嵐正一会長は「委員会では骨寺の価値を否定するような意見はなかったと聞く。今後は県や文化庁、市や町との協議になると思うが、地元としては今後も取り組みを継続していく」と語った。

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