県内外

最低賃金854円に 33円引き上げ 地方審答申【岩手】

 岩手地方最低賃金審議会(会長・丸山仁岩手大教授)は23日、2022年度の県最低賃金(時給)を現行の821円から33円(4・02%)引き上げ、854円に改正するよう岩手労働局(稲原俊浩局長)に答申した。新型コロナウイルスの影響に加えロシア・ウクライナ情勢に伴う物価高騰など不安定な経済状況が続く中、中央最低賃金審議会が示した地域別最低賃金の改定目安(30円)に3円上乗せして決着。引き上げ額は、最低賃金を時給で示すようになった02年度以降で最大の上げ幅となった。早ければ10月20日から適用される。【3面に関連】

 公益、労働者、使用者の代表委員各5人で構成する同審議会は、各分野3人ずつによる専門部会で3回審議を重ねた。

 専門部会の審議では、「事業存続と雇用維持を最優先に考えるべき」「企業の賃金支払能力を最も重視すべき」などと求める使用者側に対し、労働者側は「最低賃金近傍で働く労働者の生活水準の維持・向上と物価高騰に耐え得る引き上げが必要」「北東北最下位からの脱出を」などと両者の主張は折り合わず、最終的に公益委員による提示で33円引き上げ案を賛成多数で決定した。

 23日に盛岡市内で開かれた地方審では、部会審を踏まえ33円引き上げについて採決を行い、公益側と労働者側の合わせて9人が賛成、使用者側5人が反対。結果として中央審が示した目安より3円高い引き上げ額に決定した。

 引き上げ理由として公益委員は、目安額を踏まえて隣県を中心とする全国の対応状況や急激な物価上昇、コロナ禍などを加味した上で、「岩手の経済実態は北東北の中で後ろに並ぶものではない」と判断。853円とした秋田、青森両県の答申を1円上回った。

 企業負担が増す懸念があるため地方審は、中小企業や小規模事業者へ実効性ある支援を国に要望する付帯決議を確認。賃上げのための環境整備として業務改善助成金の拡充や賃上げ分を補填(ほてん)するような助成金の創設などを求めている。

 答申内容決定後に、使用者側で県経営者協会の藤田芳男専務理事は「内容は到底納得できるものではない。中小・小規模事業者の経営に大きな影響を与えるのは確実で、支援の下に賃上げが実行され、これまで通りの事業継続や雇用維持がなされることを望む」と支援策の徹底を求めた。一方、労働者側で連合岩手の佐々木正人副事務局長は「賃金の格差是正や最低賃金近傍で働く方の生活保障、本県が北東北3県のトップランナーになることが必要と思い、(公益委員の提案に)賛成した。労働者に何とか報いることができたと思う」と一定の成果に感触を得た様子。

 稲原局長は「昨年度に続くコロナ感染拡大やウクライナ情勢等による原材料価格の高騰、円安といった経済、雇用への影響を大きく受けている状況の中で頂いた答申を重く受け止めたい。付帯決議の内容は関係省庁に上申し、小規模事業所への支援に全力で取り組みたい」と語った。

 本県の最低賃金は16年度以降、毎年度約3%ずつ上昇、20年度は新型コロナの影響などで0・38%増にとどまったが、21年度は3・53%増となった経緯がある。

地域の記事をもっと読む

県内外
2025年5月11日付
県内外
2025年5月11日付
県内外
2025年5月11日付
県内外
2025年5月11日付