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束稲山麓地域 世界農業遺産へ一歩 国の1次審査通過

世界農業遺産認定を目指す束稲山麓地域。低平地と山麓地で異なる作物を組み合わせることで、災害によるリスクを分散する工夫が続けられている=平泉町長島

 農林水産省は26日、国連食糧農業機関(FAO)が認定する世界農業遺産への申請と、農林水産大臣が認定する日本農業遺産の候補として、一関市と奥州市、平泉町にまたがる地域で形成された「災害から生命(いのち)と生活(くらし)を守り未来へつなぐ束稲山麓地域のリスク分散土地利用システム」(申請団体・束稲山麓地域世界農業遺産認定推進協議会)が、書類による1次審査を通過したと発表した。今後は専門家会議による9~11月の現地調査や12月の2次審査(プレゼンテーション)を経て、2023年1月に日本農業遺産認定と世界農業遺産認定申請地域が決まる。

 1次審査を通過した申請書は▽概要情報▽農林水産業システムの概要▽申請システムの重要性▽認定基準の各項目に係る申請地域の特徴―の4項目で構成。申請システムの重要性では、肥沃(ひよく)な土壌の半面、洪水害に見舞われる北上川沿いの低平地と、干ばつや土砂災害などがある山麓地を分散所有して異なる作物を組み合わせることで、他に例のない特有の災害リスク低減の工夫をしてきた点などを特徴として挙げている。

 世界農業遺産は、地域固有の自然や環境、伝統文化が反映された農業文化や風景を後世に残すためFAOが認定。同協議会では18年度に初めて提出した申請書が1次審査を通らず、20年度の再挑戦では日本農業遺産認定と世界農業遺産国内候補地を決める2次審査に進んだものの落選した。

 3度目となる挑戦での1次審査通過に、同協議会長の青木幸保平泉町長は「2年間の取り組みによる再挑戦で審査をクリアできたが、これからがまさに正念場」と語った。

 1次審査では申請書を提出した4地域の審査が行われ、いずれも審査を通過。このうち和歌山県有田・下津地域の「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」と愛媛県南予地域の「愛媛・南予の柑橘農業システム」は既に日本農業遺産の認定を受けており、埼玉県比企丘陵地域の「地形を活かした比企丘陵の谷津沼農業システム」は束稲山麓地域と同様、同遺産からの認定を目指す。

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