岩手工場が竣工 MMアグロケミカル 来月本格稼働 北上
農薬メーカーMMアグロケミカル(本社東京都中央区、資本金4億円、麓康紀社長)が、北上市北工業団地に立地する岩手工場の製造棟改修工事が完了した。国内の農薬原料製造拠点として水稲用殺菌剤、新規殺虫剤の2原体の生産体制を強化。10月に本格稼働し、2年後をめどに生産規模拡大を目指して人員増も計画している。
同敷地内に1969年に立地し医薬品、農薬、動物薬を製造販売していたMeiji Seikaファルマ北上工場が、事業再編で2019年に閉鎖。20年4月から農薬向けに製造棟の改修に着手していたところ、22年1月に三井化学アグロ(本社東京都)に農薬製造販売事業が譲渡された。
三井化学アグログループ社のMMアグロケミカルは、国内の農薬原料製造拠点に特化。ファルマから受け継いだ敷地面積14万平方メートルのうち排水、原料保管設備、倉庫などで3分の1程度を使用する。改修した製造棟は鉄骨造り一部2階建てで、延べ床面積2670平方メートル。改修事業のほか、新たな設備導入など総事業費40億円余りを投じた。
既に試作品を製造し、来月本格稼働を計画。2年後には主に国内農家向けの水稲用殺菌剤、国内のほか海外輸出も展開する新規殺虫剤合わせて1000トンの製造を目標とする。
現在の従業員は29人。ファルマ当時の従業員も多く在籍する。増産に向け今後人員を増やし、25年に50人規模を目標に地元のほか、東北各県から採用する。
農薬の原料製造はこれまで中国に依存してきたが、環境汚染対策の規制強化や新型コロナウイルスの影響もあり生産が滞っていた。MMアグロケミカル親会社でMMAG(本社東京都)の谷口勝之社長は「海外はいろいろリスクがあり、国内でもう一度自社製を作るため(ファルマの)土地、建屋を有効活用し再建した。水稲用殺菌剤は東北で非常に多く使われ、(製造拠点に)東北のこの地を選んだ。しっかりとした生産体制を構築し、新たな農薬会社としてもう一段飛躍していきたい」と説明した。
竣工(しゅんこう)式には三井化学アグログループ関連企業、県、市、施工業者ら約70人が出席。谷口社長、麓社長、髙橋敏彦市長らが玉串をささげテープカットした。
麓社長は「地域と社会への貢献を念頭に、環境保全に十分配慮し安全で高品質な製品を送り出す。日本の農業生産、ひいては世界の食と緑を守るため成長していきたい」と決意を述べ、髙橋市長も「ファルマ撤退後は広大なエリアがどうなるかと思っていたが、大変ほっとしている。土地と設備を有効活用し、環境に優しいSDGsな工場再起動になった」と歓迎した。
同工場周辺には半導体大手・キオクシア岩手などもあり、企業集積が一層加速している。