「雨ニモマケズ」手帳公開 賢治愛用 文章記す 40周年特別企画、25日まで 記念館【花巻】
開館40周年を迎えた花巻市矢沢の宮沢賢治記念館で、特別企画として宮沢賢治が手帳に書いた文章「雨ニモマケズ」の実物が一般に公開されている。25日までの期間限定で、全国の賢治ファンや市民らの注目を集めている。
「雨ニモマケズ」は、花巻の実家で闘病中だった賢治が、亡くなる約2年前の1931(昭和6)年11月3日、愛用していた手のひらサイズの手帳に書いたとされる。手帳は全165ページにわたり文学作品の下書きやメモ、経典、自戒の手記などが記されている。
19日には賢治の弟清六の孫で手帳を所蔵する林風舎代表取締役の宮澤和樹さん(58)が公開を記念して講演。祖父から聴いた賢治の人となり、文章が世に知られることになった経過、込められた賢治の思い、逸話を紹介した。
「雨ニモマケズ」について宮澤さんは、代表作のように捉えられているものの、詩と童話の二つに大別される賢治の作品群のどちらにも属さず、「『こう生きたい』『こう生きられたらいいな』という思いで書いたのではないか。人に見せるつもりもないので、ストレートな表現でありのままの気持ちを書いた文章だと思う。作品というよりも賢治を知ってもらう資料だ」と語った。
同日は連休最終日とあって県内外から大勢が来館。神戸市の会社員女性(51)は「雨ニモマケズは知っていたが、実物はもちろん、講演では初めて知ることだらけ。逸話を聴くことができて良かった」と話していた。
実物の公開は、賢治生誕120年を記念した2016年以来6年ぶり。大型観光キャンペーンに合わせ21年に企画したものの新型コロナウイルスの感染拡大により中止され、今年の開館40周年、北東北3県とJRなどが連携して実施する大型観光キャンペーンに合わせて改めて企画された。同館の宮澤明裕学芸員は「実物が見られる貴重な機会。ぜひ足を運んでほしい」と話している。
開館時間は午前8時30分~午後5時(入館は4時30分)。入館料は一般350円、高校・学生250円、小・中学生150円。