伝統の南部鉄器発信 及源鋳造創業170周年記念 29、30日にイベント【奥州】
伝統工芸南部鉄器メーカー及源鋳造(本社奥州市水沢羽田町、及川久仁子代表取締役社長)は、29、30の両日、同社で創業170周年記念イベントを開催する。イベントは江戸時代から現在まで受け継がれてきた鉄器作りと使う人をつなげようとの思いを込め、「愉(たの)しむでつながる」を合言葉に開催。実際に使われている鉄器の展示や新商品ブランド発表、工場見学・体験などを予定している。及川社長は「激しい変化の時代だが、伝統的な工芸がこの時代にあり続ける意味を提案したい」と語っている。
同社は江戸末期の創業だが明確な記録がないため、創業者及川源十郎が生まれた1852年を創業の年としている。170周年に位置付けた2022年は、コロナ禍、経済情勢の変動、原材料高騰など激しく変動する情勢の中で次の10年を考えるため、社員に呼び掛けて実行委員を募り、若手6人が「これからを考える」のテーマで検討を重ねた。
「伝統工芸品は安さや便利さ、効率性と対極にあるが、そこには作り手、使い手も楽しむ経験がもたらされるのでは」とし、記念事業の合言葉を決めたという。作り続け、使い続けた時に思いをはせ、今のものづくりを見詰め、これからも続く日々に心を寄せるとの思いも込めた。
両日のイベントは午前10時30分~午後5時。同社の工場と工場直営店「OIGENファクトリーショップ」が会場で、工場見学・体験、記念展示「鉄器と暮らす」、新商品ブランド「むぐ」の発表・展示を行う。
イベント中は自由に工場が見学できる。溶かした鉄を型に注ぐ「注湯」工程の熱気を体験できるデモンストレーション、美しい鋳肌を生み出す砂型の砂に触れるコーナーなどを予定。注湯時にあふれて固まった鉄「湯玉」のプレゼント、職人が鉄瓶で入れたコーヒーのサービスもある。
記念展示は工場内で開催。長年使っている人や鉄器との暮らしを毎日インスタグラムに投稿している人たちから、名入れ鉄瓶、ご飯釜、煎り鍋などを借りて展示。実行委員が鉄器と関わってきた思い出や楽しんでいる様子を聞き取り、紹介するコーナーという。
新商品ブランド名のむぐは無垢(むく)が由来。及川社長は「岩手らしくなまりで表現した」という。「今では使われない技法を継承しようと2人の職人が手作りで仕上げる。通常とは違うたたずまいになり、面白い形になるのが特徴」とし、「工芸の先にあるのは作る側の遊び心。使う側には使い方や合わせ方などを考えるクリエーティブな時を楽しんでもらいたい」との思いを語っている。
問い合わせは、同社=0197(25)5925、Eメールinfo@oigen.jp=へ。