幻の酒復活へ連携 「河東の誉」来年販売目指す 東和・酒店と農家で米作り【花巻】
花巻市東和町内で造られていた日本酒「河東(かとう)の誉(ほまれ)」の復活プロジェクトが、町内で進められている。河東の誉が販売されていたのは戦中までで、残っている資料も少ない幻の酒。製造、販売していた同町土沢の猿舘酒店(猿舘祐子店主)と地域の農家らが連携し、町民を楽しませた日本酒を再び東和によみがえらせる。
同店は1935(昭和10)年に造り酒屋として創業。戦後に造酒業を廃業し、酒販売店となった。河東の誉は30年代から40年代まで販売されていたとみられ、戦中は物資不足で原料の確保など困難を極めたという。
復活プロジェクトの発起人は3代目店主の猿舘さん(64)。新型コロナウイルス感染拡大の影響で酒造業が苦境に立たされる中、「前々からやりたいと思っていたが、踏ん切りがつかなかった。コロナで酒販売も苦しくなり、新しいことを始めなければと思った」と今年から活動をスタートした。
原料のコメから手作りという大規模な計画に、初めての酒造りに不安を募らせた猿舘さんを地域住民が支えた。薄衣忠孝さん(69)が所有する水田を提供し、コメ栽培も協力している。
河東の誉の原料や味を知る資料はほぼなく、手探りで活動は進められており、酒米ではなく、減薬農法で栽培された「ひとめぼれ」を使用する。19日には猿舘さん、薄衣さん夫婦、地域住民ら6人で稲刈りが行われ、一部分は昔ながらの手刈りで作業に当たった。
来年2月に原酒が完成する予定で、5月の販売を目指している。薄衣さんは「戦中で酒が簡単に飲めない時代。町民に愛されていたお酒だろう。完成品を早く飲んでみたい」と期待する。猿舘さんは「地域の人たちの後押しがあったからこそで、自分一人だけだったら絶対にできなかった。本当にありがたいこと」と感謝の言葉を繰り返した。