やきものの歴史たどる 市博物館テーマ展 縄文から現代まで280点【花巻】
花巻市高松の市博物館で、テーマ展「花巻のやきもの―縄文から現代―」が開かれている。縄文時代の縄文土器や中世経塚から出土した中国産白磁、江戸時代の花巻で生まれた鍛冶町(かじちょう)焼や花巻焼、現代作家の作品など約280点を並べ、花巻の焼き物の歴史や文化をたどる。20日まで。
花巻のやきものの歴史は縄文土器にまでさかのぼる。最も古いのは上台1遺跡(同市高木)から見つかった約9600年前(縄文時代早期)の深鉢形土器。5~6ミリと薄手で表面に文様を持たず、全国でも出土例が少ない貴重な資料だ。土器の内側に焦げ、外側に煤(すす)が付着し、煮炊きに使用されたことが分かる。
土器の時代が長く続いた後の古墳時代は焼成技術が向上し、弥生土器の系譜を持つ土師(はじ)器、ろくろ成形の須恵器、奈良時代には釉薬(ゆうやく)をかける施釉陶器が登場。花巻の遺跡からも見つかっている。
中世は質素な焼締め陶から中国陶磁器のような高級なものまでが日常的に用いられた。花巻でも経塚や城館遺跡などから中国陶磁器と国産陶器が見つかり、中でも丹内山神社経塚(東和町)から出土した12世紀後半の中国産白磁四耳壺(県指定文化財)が目を引く。
安土桃山時代には茶の湯の隆盛とともに使うだけでなく鑑賞する意味も加わり独自に発展。江戸時代になると、有田で磁器の生産が始まり、国内各地でさまざまな陶磁器が生産されるようになる。花巻では盛岡藩の御用窯として「鍛冶町焼」、幕末には「花巻焼」が開かれた。
明治時代に入ると、窯業技術の近代化により外貨獲得の産業として発展、美術工芸的な作品づくりを行う作家が誕生していく。県内でも各地に窯場が開かれ、一時は20カ所を超えた。花巻では鍛冶町焼に加え、新たに金矢焼、湯ノ沢焼、台焼が開かれた。台焼を中心に近代の磁器を紹介する。
テーマ展は時代ごとに6章で構成。担当した同館主査の高橋静歩学芸員は「どの時代の作り手も使い手や見る人のことを考えて作っている。焼き物を見る現代の私たちが作り手の思いに触れた時に感銘を受けると感じる」と話す。
会期中は無休で、開館時間は午前8時30分~午後4時30分。入館料が必要。19日にはテーマ展にちなんだ学芸員講座も開かれる。
電子新聞momottoで紙面未掲載写真を公開中