賢治世界夫婦で表現 移住10年合わせ イラスト、ガラス展示【花巻】
花巻市御田屋町の旧菊池捍(まもる)邸で、牧師の傍ら小説などの挿絵としてイラストを描く夫と、ステンドグラスの制作に取り組む妻が、同市移住10年目を機に、2人展「~ひかりのいずみ~Vol・2」を開いている。同市の詩人で童話作家の宮沢賢治ゆかりの洋館に賢治童話を主題にした作品が並び、訪れた人の関心を誘っている。20日まで。
作品展を開いているのは、同市仲町の牧師鈴木道也さん(39)とステンドグラス作家の摩耶子さん(39)夫妻。道也さんが日本基督教団花巻教会の牧師となったのを機に同市へ移り住み10年目、結婚10周年に合わせて企画した。
京都府生まれ、大阪育ちの道也さんは、小学3年生の頃から油彩を始め、高校生の頃には文学に興味を持ち詩や小説を執筆。北海道大文学部在学中にはバンド活動も行い、卒業後は社会人経験を経て東京神学大に編入し、牧師となった。
2人展ではCDジャケット、教会活動、執筆活動で手掛けたイラストや挿絵を展示する。中でも「銀河鉄道の夜」のモデルになったとされる花巻電鉄の「馬面電車」をモチーフにジョバンニとカムパネルラが会話している場面を表した「ほんとうのさいわい」と題した作品は2人展のために描き下ろした一枚。「足がぶつかるほどの距離で話しているこの時間こそが『ほんとうのさいわい』なのかもしれない」と思いを巡らす。
山形県生まれの摩耶子さんは、都留文科大文学部国文学科在学時からステンドグラスに興味を持ち、学校教諭を経てステンドグラスのプロ養成所へ進んだ。卒業後は渡仏して絵付け技法を習得。夫と共に同市に移り住んでからは受注制作の傍らイベント出店や委託販売などを行う。
2人展では白鳥停車場に降り立つジョバンニとカムパネルラ、「立派な眼もさめるような白い十字架」など銀河鉄道の夜の場面を描写した18連作をはじめ、ランプやあんどん、古典の模写などを展示する。揺らぎのあるガラスを通した光が印象的で「ガラスそのものの色に加え、ガラスの向こうの風景や光の力をもらいながら成立するアート。刻々と変化していくのが面白い」と魅力を語る。
2人展は2012年以来2回目。花巻で暮らした10年を「あっという間だった」と振り返るとともに、「花巻に来てから賢治作品を読み、ゆかりの場所を訪ね歩くことが楽しみなった。賢治ゆかりの建物で賢治にちなんだ作品を楽しんでもらえたらうれしい」と話す。
開場時間は午前10時~午後4時。入場無料。