江戸期の宿場に焦点 川挟む黒沢尻と鬼柳 地図、古文書で状況比較 博物館特別展、企画展【北上】
北上市立花の市立博物館で特別展「川をはさんだ2つの宿場~江戸時代の黒沢尻と鬼柳~」と、企画展「郷土の画人・菅原黒川」が開かれている。ともに江戸時代がテーマで、現代の北上市の原点を垣間見ることができる。2023年1月9日まで。
特別展では、ともに盛岡藩内にあった黒沢尻、鬼柳の両宿場を古絵図、古文書を中心に資料30点とパネルで紹介。仙台藩境で関所が置かれ人馬往来の拠点だった鬼柳は正規の「宿駅」で、黒沢尻は鬼柳と花巻の宿駅をつなぐ補助的な「間駅」の役割だった。江戸時代後半には北上川舟運で物資集散地となった黒沢尻河岸に隣接し、商人が集まる宿場となった黒沢尻が大きく発展した。
仙台藩側から盛岡藩領を描いた絵図も公開。黒沢尻が大きく描かれ、河港と宿場の機能を持ち、無視できない存在だったことが見て取れる。幕末から明治初期には北上川舟運のみならず奥州街道、日本海方面からの水陸双方の交通網を生かし、商人が広域的な取引をしていたことも説明。一方、鬼柳は江戸後期から幕末にかけて対ロシアの蝦夷地警備で幕府役人の往来が多く過重な負担となり、宿駅としては厳しい状況だったとしている。
渋谷洋祐館長は「北上は藩境で舟運、奥州街道もあり江戸時代から交通の要衝だった。二つの宿場の違いを見ていただければ、現在につながる部分も見えてくるはず」と語る。
一方、企画展では、江戸時代末期に活躍し現在の北上市立花に住んでいたとされる画人・菅原黒川(1787~1862年)の作品で、同館のほか花巻市博物館、寺、個人が所有するびょうぶ画など7点を公開している。
中国の伝説的な仙人、花鳥などを描いた大型の「仙人花鳥図屏風(びょうぶ)」「花鳥人物図屏風」をはじめ、海辺で談笑する老いた男女、鶴亀を表現した「高砂図屏風」、70歳時の自画像、75歳で死去する直前に完成したヱビス図などを展示。保存状態もよく松の葉、鳥の羽根などが細部にわたり緻密に描かれている一方、大胆でスケール感のある作品が来場者を引き付けている。
川村明子主任学芸員は「細かい筆使いもじっくり見ていただき、江戸時代の北上に素晴らしい画家がいたことを知ってほしい」と話している。
期間中は月曜と12月28日から1月4日まで休館。開館時間は午前9時~午後5時。観覧料は一般500円、高校生240円、小中学生170円、未就学児無料。北上、奥州、金ケ崎、西和賀各市町の小中学生無料。北上市消防団員カード提示で5人まで無料。