花巻

なりわいの場 山に焦点 林業、マタギ道具紹介 市博物館企画展【花巻】

太い木材を手作業で挽き割るためののこぎり

 花巻市高松の市博物館で、山をなりわいの場として暮らしてきた人々にスポットを当てた企画展「山の暮らし」が、29日まで開かれている。人々が使った道具やかつての様子を伝える写真など91点を展示し、花巻の山での暮らしに迫っている。

 山に入り木を切り出したのは「杣(そま)」や「山子(やまご)」と呼ばれる林業従事者。展示品の「前挽(まえびき)」などとも呼ばれた大鋸(おが)は、伐採した木を板や角材に加工する木挽き職人の道具で作業の迫力を感じさせる。

 山林に生息するクマやカモシカ、野ウサギなど狩り、生薬として利用したり、毛皮として売ったりしたのはマタギ。花巻では「鉄砲打ち」「山立(やまだち)」などと呼ばれ、北上高地のマタギ相伝の秘伝書「諸々之命留タル時ノ秘文傅」は、狩猟で使用する呪文などが記され興味深い。

 花巻周辺の山間部には洪水調整や貯水、発電を目的にした田瀬、豊沢、早池峰、葛丸の四つのダムがある。1941(昭和16)年に着工した田瀬ダムの仮設備鳥瞰(ちょうかん)図などのダム建設で発展していくことが分かる資料がある一方で、移転を余儀なくされた人々がいたことも伝えている。

 企画展は▽木を切る▽動物を狩る▽炭を焼く▽鉱石を掘る▽ダムをつくる―に序章を含めた6章構成。序章では、宮沢賢治の童話「なめとこ山の熊」で有名な「ナメトコ山」の実在の証拠を示す資料「稗貫郡下シ沢村鉛村豊澤村山絵図写」が展示されている。

 北上川上流総合開発ダム群の土木学会推奨土木遺産認定を記念した特別巡回展も同時開催している。

 同館の松橋香澄学芸調査員は「花巻は奥羽山脈と北上高地という高い山に囲まれた地域。山をなりわいの場としてきた人の暮らしを紹介している。名前はなかったかもしれないが、そこで暮らしていた今につながる生活をつくった先人たちを知ってほしい」と話している。

 開館時間は午前8時30分~午後4時30分。入館料が必要。

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