有形文化財指定へ 紙本墨書 天台寺本堂再興勧進帳 県保護審【岩手】
県文化財保護審議会(会長・熊谷常正盛岡大名誉教授)は3日、盛岡市内で開かれ、二戸市の天台寺が所蔵する「紙本墨書(しほんぼくしょ) 天台寺本堂再興勧進帳」を新たに県有形文化財に指定するよう佐藤博県教育長に答申した。中世後期(16世紀)の同寺の縁起・由緒を伝える貴重な資料。指定されれば、有形文化財(美術工芸品)は221件、うち歴史資料の部は11件となる。
同勧進帳は1577(天正5)年に武蔵国出身の真言僧「榮澄(えいちょう)」が記したとされ、大きさは縦27・0センチ、横301・5センチ。同寺本堂と仁王門の保存修理工事(2013~19年)に伴う資料整理中に、浄法寺歴史民俗資料館(同市)の保管資料から発見された。
17年度に保存修理を施工し、保存状態は良好。同寺の本堂修理のための勧進(寄進)を願う趣旨とともに、同寺の由緒や仏像の由来、八葉山(はちようざん)に関することなどが記されている。
これまで知られていた1657(明暦3)年の「桂泉(けいせん)観音書上(かきあげ)」の記述と同様の由緒のほか、同寺の本堂が1347(正平2)年に再興したものであることが確認でき、1658(万治元)年に建立された現在の本堂以前の状況を伝える資料としても貴重とされた。
指定の答申について、同寺の菅野宏紹住職は「大変喜ばしい。この指定を契機に、不明点が多い中世期の天台寺の姿の解明が一層進むことを期待する」とのコメントを発表した。